ドラッグストア成長鈍化、勝ち組の分かれ目は? あらゆるコスト上昇で利益確保が難しい状況に

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2020年の中間決算時点の人件費率は12.9%だったが、今回の中間決算では14.1%に跳ね上がり、当初の想定を超える勢いで上昇が続く。

今後は同社の特徴でもある24時間営業や深夜営業を地域の事情に合わせて変えることや、顧客に対してメイクの方法やおすすめの化粧品を紹介するビューティアドバイザーの配置の見直し、不採算店舗の閉鎖、DXの推進による業務効率化などを掲げる。

桐澤英明社長も「人件費の部分をいかに攻略していくかがカギ」と今後の課題を語る。「これまで直感や経験に頼っていたが、今後は客観的なデータに基づいて意思決定していく。ウエルシア薬局の店舗の生産性(が低く)、販管費の高さに問題があるとの指摘があり、DX化も進める」(桐澤社長)。

これまでは差別化を意識して医薬品や化粧品の領域でサービスの向上を進めてきたが、人件費の負担が重くなってきた今、こうした方針を大きく見直す時期に来ているようだ。

ただし、これらの改革をいつ、どの程度まで進捗させるのか、具体的な行程は示されていない。他社と差別化するサービスを保ちながらどう効率化を進めるのか、ウエルシアは難題に直面している。

普通の安さで、ディスカウント戦略から転換?

一方、大幅増益となったのが九州を地盤にするコスモス薬品だ。売上高構成比の約6割を食品が占める「食品強化型」の代表格で、5年前から東京にも出店攻勢をかけている。

東京・八王子のドラッグストアコスモス叶谷店。冷凍食品や冷蔵食品が充実しており、安さに魅かれて車で食品を買い求めに来る客も多い(記者撮影)

同社は年間100店舗以上の大量出店など規模拡大を背景に、仕入れの原価を低く抑えてきた。前期はディスカウント戦略をさらに強化し、圧倒的な安さでアピールしていた。

しかし、今年5月以降は利益率を以前の水準に戻し、食品などの店頭価格を引き上げた。これが増益の主な要因だ。

直近の決算を見ると、売上総利益(粗利益)の改善が目立つ。2024年6~8月期の粗利益は545億円。粗利率は20.8%だ。前年同期比で75億円増、率にして同1.4%の上昇となった。

「昨年はインフレの入り口に立っているという認識で、原価の改善分以上に粗利益率を低くして安く商品を販売してきた。今年はインフレ分の価格上昇を許容している。昨年が異常に安かっただけで、今年は『ふつうの安さ』に戻している」(柴田太取締役)

普通の安さといっても、他店と比べた優位性は失われていない。東京・八王子市の店舗を訪れたところ、プライベートブランド(PB)食品の価格は、骨を取り除いた冷凍さばの生姜煮が2切れ入りで税込み298円、冷凍の羽根つき餃子は税込み178円、3パックの納豆は税込み68円など、スーパーやコンビニと比べてもまだ安い。

とはいえ、店頭価格が上昇すれば客離れも生じる。プラス基調だった既存店売上高は、今年7月に前年同月比2.1%減と久々のマイナスとなり、9月は同4.2%減、10月も1.8%減と前年割れとなる月も出てきた。

同社は今期も大量出店を続け、増収増益を達成する計画だが、既存店の成長は最も重要な要素の1つ。規模拡大とのバランスが問われそうだ。

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