欧州連合という夢は崩壊してしまうのか--イアン・ブルマ 米バード大学教授/ジャーナリスト

加えて、EUがバラバラになれば、欧州諸国の世界的な存在価値は限定的になってしまうだろう。一方、統合されたままなら、依然として欧州は非常に重要だ。

EU解体の代替案はEUを強化すること、すなわち各国債務を一カ所に集めて欧州財務省を創設することだ。もし欧州市民がこの案を受け入れるのであれば、EUはさらなる民主主義を必要とする。そのためには欧州の連帯感が不可欠だが、それはブリュッセルの官僚たちが作ったEUの歌や旗、その他の小道具からは生み出せない。

まずは裕福な北部の欧州人が、EUを強化することが自分たちの利益になる──実際そうなのだが──と納得しなければならない。北部の欧州人は、南部の欧州人に安く輸出することを可能にしたユーロから最も恩恵を受けてきた。こうした主張をするかどうかは国家レベルの政治家次第だが、ブリュッセル、ルクセンブルク、ストラスブールにあるEU諸機関を欧州市民にもっと近づける必要もある。

一つの選択肢は、欧州委員会のメンバーを欧州人の投票で決めることだ。その場合、候補者は自国だけでなく、ほかの国々でも選挙活動をすることになる。また欧州人が欧州の大統領を選出できるようにするということもありうる。

国民国家27カ国の共同体においては、民主主義は狂気じみた夢のように思えるかもしれないし、おそらくそのとおりだろう。しかし、より統合された欧州を構築することをあきらめるつもりがないなら、これが検討に値するのは間違いない。

Ian Buruma
1951年オランダ生まれ。70~75年にライデン大学で中国文学を、75~77年に日本大学芸術学部で日本映画を学ぶ。2003年より米バード大学教授。著書は『反西洋思想』(新潮新書)、『近代日本の誕生』(クロノス選書)など多数。

(週刊東洋経済2012年1月7日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
photo:S. Solberg J. CC BY-SA
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