巨額還元でも抜け出せない東洋証券の「株主対応」 新中計の中身は、なりふり構わぬ収益改善策

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ただし預かり資産残高の目標をクリアできたからといって、万事うまくいくわけではない。問題はこうした施策を積み上げたところで、目標とするROE8%に届かないことだ。

確かに投信やファンドラップの残高が増えれば、信託報酬などが安定的に入るようになる。しかし劇的に収益が増えるわけではない。ROE8%を達成するためには、2024年3月期に13億円だった純利益を倍以上に増やす必要がある。

業績改善に向けて、新中計にはありとあらゆる策を盛り込んだ。具体的には地域密着の追求やLINE WORKSを活用した株価連絡などの顧客フォロー、ポートフォリオ提案の推進などだ。自社の強みを生かすため、市況低迷が続く中国株取引の強化も挙げた。ほかにもIFAビジネスの強化、公開・引受部の強化など、なりふり構わぬ姿勢がにじむ。

含み益の吐き出しはどこまで

こうした姿勢に競合先から疑問の声が上がる。例えば公開・引受部の強化では、大手証券が手がけない小型のIPO案件を中心に主幹事業務を獲得するというが、「儲かる案件は大手が持っていってしまう。(その他の小型IPO案件を)やっても赤字になる可能性が高い」と、ある証券会社幹部は語る。

中国株取引の強化では、同時に発表したコスト構造改革で上海駐在員事務所の閉鎖を発表した。東洋証券は「開設当時と比べ人の行き来が簡単になり、香港の現地法人で対応できる」と説明するが、「やっていることのちぐはぐ感が目立つ」と疑問視する声も上がる。

小川社長も「収益改善策だけでROE8%は届かない」と、自ら認めている。そこで足りない分を補うために繰り出すのが、投資有価証券の売却による特別利益の計上だ。

純投資目的で保有する株式に一定の含み益があるといい、これらを吐き出すことで純利益をかさ上げする構えだ。それにより今期の2025年3月期からROE8%を実現する。この第2四半期も早速、11億3000万円の売却益を計上した。

一方で、株主提案で売却を求められた広島市の賃貸用不動産については、引き続き保有する意向だ。経営企画を担当する圓城寺貢常務は「広島の物件はほぼ満床。(同物件に入居している)広島支店のコストも浮いている。取得時の狙い通りだ」と話す。ほかにも古いビルなどをいくつか保有しているといい、そちらは適宜売却する予定だという。

東洋証券・小川社長
小川社長(写真中央)は「特定の株主だけでなく幅広いステークホルダーと対話する」と話した(記者撮影)

こうした施策によってROE8%を達成したとしても、いつまでも含み益や不動産の売却益に頼れるわけではない。小川社長は「(保有株の売却で)時間をいただいて、その間に安定収益を積み上げる」とし、いずれは本業の収益でROE8%を実現させる方針だ。だが、その利益水準まで預かり資産を積み上げるハードルは極めて高く、うまくいくかは不透明だ。

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