「新幹線国際会議」台湾で開催、何を議論したのか 高速鉄道に関心持つ世界の要人がずらり参加

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しかし2022年に再び労働党政権となり、この高速鉄道計画が復活。「オーストラリアは人口密度が低いといわれるが、高速鉄道ができる東海岸には全人口の40%が集中しており、1平方キロ当たりの人口密度は420人で日本並みである」とジョセフ氏は力説した。

高速鉄道の建設により新たな雇用が生まれ、土地開発やCO2削減などの効果もあるとして、今年末までにニューカッスル―シドニー間の投資価値検討書を作成する計画だ。

各国の状況が紹介された後もさまざまな発表や質疑応答が行われたが、中でも谷口智彦筑波大学特命教授の「Winning Hearts and Mind(人々の心をつかむ)」というプレゼンテーションは興味深いものであった。高速鉄道のような長期にわたる大型プロジェクトは簡単には実現しない。谷口氏はかつて安倍元首相のスピーチライターとして名をはせただけに、どうやって国民の支持を増やすかというテーマには会場の多くの参加者がうなずいていた。

会議終了後にはレセプションが行われた。会議が公式の情報提供だとしたら、レセプションは非公式の情報交換の場である。会場ではグラスを手にした各国の鉄道関係者たちが高速鉄道プロジェクトについて語り合ったに違いない。

翌11月1日、会議参加者たちは2班に分かれて、桃園市にある高鉄の運行管理センターや高雄市にある燕巣総合車両工場を訪問した。ここでも「台湾オリジナル」の技術が積極的に披露された。

新幹線ベースに「その国ならではの鉄道を」

冒頭の「台湾の高速鉄道の実績が世界に認識されたからだと思うが」という記者の発言にはこんな続きがあった。「高鉄は海外のプロジェクトについてどのように取り組むのか」。

江会長は自信満々にこう答えた。

「IHRAと連携して、ぜひ私たちの経験をご提供したい」

台湾にも高速鉄道を建設し、運行を成功させたノウハウがある。しかも、日本にはない独自の取り組みもある。台湾も自分たちの強みを武器に、日本とともに世界の高速鉄道プロジェクトに打って出たいと考えても不思議ではない。

IHRA 宿利理事長 台湾高鉄 江董事長
国際高速鉄道協会(IHRA)の宿利正史理事長(左)と台湾高速鉄路の江耀宗董事長(記者撮影)

宿利理事長は「新幹線をベースに計画するとしても、できあがったものはその国ならではの高速鉄道であってほしい」と述べる。インドも当面は日本製の車両を使うが将来は自国で製造し、さらに諸外国に輸出することをもくろむ。そこには「Make in India(インドで作る)」という国家目標がある。安全を保つための基本思想はもちろん大前提だが、そのうえで各国オリジナルの要素を加えた高速鉄道が次々と誕生すれば、新幹線システムはより強靱なものとなるのではないだろうか。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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