「夫に会えず寂しい」新妻が54歳夫にぞっこんの訳 人生モテ続けた元ホステスが選んだ"意外性"

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「私の心の中には社長さんがいたので、最初ははぐらかしていたんです。でも、夫とさらに仲良くなり、社長さんとは自然と距離を置くようになりました」

その2年後である今年、幹部社員である武史さんは再び東京本社に呼び戻された。武史さんは「これからもずっと一緒にいてほしい」とプロポーズ。関西での生活を愛する美幸さんは「東京には行かへんよ」という条件付きで承諾した。

「45歳の私がこれから先の人生でプロポーズしてもらえるなんてことはないだろうなと思ったからです。夫は賢くて真面目な人なので、伴侶として間違いありません」

無骨な武史さんは九州の実家にも根回しなどはしていなかった。自分が東京に行く前に婚姻届を出したいと焦り、両親にいきなり電話で「結婚することになった」と通告。美幸さんの印象が悪くなってしまった。

「お母さんは長男である夫が大好きなだけにカンカンだったみたいです。一度だけ、車で夫の家族に会いに行きましたが、2人の妹さんがこれまた強烈で……。関西人に偏見があるのかもしれません」

美幸さんの最愛の父親は7年前に他界しており、母親は体調を崩している。結婚を伝えても「アンタだけが心配だったのでよかった」と言う程度。2人の兄たちはとっくに結婚しており、妹のことにはさほど関心を示さない。

「夫は私の人生の救世主」

家族に祝福されたとは言えず、結婚後も一緒に住むわけではない。それでも美幸さんは「夫は私の人生の救世主」だと断言する。

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「私が関西で暮らし続けているマンションの家賃は夫が払ってくれています。東京からこっちに来たときに家飲みするのが楽しみなようです。生活費もクレジットカードを使わせてもらっていますが、夫は明細をきっちりチェックする人なので無駄遣いはできません(笑)。私もときどき東京に遊びに行っています。今後、東京に住むのか最終的には夫の実家がある九州に行くことになるのかはわかりませんが、いきなり関西を離れるのは怖いんです。しばらくは通い妻です」

美幸さんの言葉だけを受け取ると、通い妻というよりも本格的な愛人になったような印象を受ける。しかし、取材を終えてコーヒーカップを片付けているときに美幸さんは本音を漏らした。

「夫になかなか会えないのが寂しいです」

長い時間を一人で生きてきた男女にとって、すべての変化をいきなり受け入れるのは難しい。武史さんは会社最優先の生き方を変えられないし、美幸さんは関西から離れたくない。それでも2人きりで家飲みをしているときに一番の心地良さを感じている。

武史さんと美幸さんにとってお互いの存在こそが帰るべき家なのだ。相手がいないときは、自宅にいても単身赴任をしているような気分なのだろう。数年後、2人は全国のどこかで一緒に楽しく暮らしている気がする。

本連載に登場してくださる、ご夫婦のうちどちらかが35歳以上で結婚した「晩婚さん」を募集しております(ご結婚5年目ぐらいまで)。事実婚や同性婚の方も歓迎いたします。お申込みはこちらのフォームよりお願いします。
大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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