これを実績ベースで検証してみよう。都区部における2013~2018年の間の需給バランスは、新規供給は年2.1%あり、滅失(ストックを建て壊すもの)が年1.1%ある。滅失とは木造や鉄骨造であればおよそ30年で、鉄筋コンクリート造では50年で市場性を失い、解体することを指す。相続した築40年の実家を人に貸すことができるかと言ったら、難しいほうが多いだろう。そうしたことだ。
新規供給は年2.1%から滅失年1.1%を引いた1.0%を世帯数が上回れば需要過多、下回れば供給過多になる。この間の実績は1.1%だったので稼働率が上がった。2015~2020年の国勢調査期間での世帯数の増加は1.6%まで上がっているので、明らかな需要過多となり、稼働率がさらに上がっている。コロナ禍に需要が減退したものの、コロナ後の世帯数の伸びは年率1.9%となった現在、さらに賃料が上がっているのだ。
世帯数予測を当てるには
先ほどの社人研の世帯数増加率予測は年率0.7%で、実績は1.6%だった。予測の0.7%は需給が一致する1.0%より小さいので、この予測を信じれば需給は緩み、家賃は下がるはずだった。
これに対して、実績の1.6%の場合、家賃は上昇することになる。たかだか5年先のことなので、世帯数予測はほぼ当てなければならない。私は仕事で人口予測をするが、誤差を少なく当てることができる。なぜなら、5年に1回のデータしかない国勢調査に頼らず、毎年・毎月発表される住民基本台帳人口を用いて予測しているからだ。
2015年の国勢調査でも発表されるのは2017年頃になる。この2年経過した状況を住民基本台帳で把握すれば、予測期間は3年に縮まる。また、5年に1回のデータと毎年のデータでは5倍精度を上げることができる。予測は「当たれば官軍、外せば賊軍」なので、どんな手を使っても当てなければデータ提供先に迷惑がかかる。
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