なぜ今「福岡移住」がこんなに盛り上がるのか 移住者が語る、東京にない「余白」の魅力<上>

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こちらの立地なら、仕事の合間に家族と海や公園に出かけることも出来ます

こんな厳しい状況から、何が生まれたのだろうか。須賀さんは「まず東京のスタッフのマインドに変化が起こりました」と話す。

「これまではトップダウンで仕事をやってきたのですが、自分たちで仕事を生み出すというスタンスに変わっていったんです。1年後くらいには売り上げも持ち直し、今ではしっかり会社を支えてくれています。その頃には私も福岡で、地元の人に支えられながら、仕事らしいものを少しずつ創りだせるようになっていました。その経験から、ビジネスで地元に貢献したいという思いが強くなりました」

福岡は俗にいう「支店文化」の街で、東京に比べてチャンスが少ないというイメージがある。しかし須賀さんは、ここには東京にはない「余白」と「可能性」があると感じたという。それはどんなものだったのか。

「シビックプライド」を醸成する環境がある

「たとえば、このオフィスもその一つ。福岡は都市の機能と美しい自然が両立している、ということはよく言われていますが、その価値を活用できている事例はまだ少ない。そこに『余白』があると思いました。

地元に住んでいる人にとっては当たり前かもしれませんが、東京からの移住者には、この環境が宝に見えるのです。地域に隠された資源が、外から入ってくる人間の視点によって発掘される。どんな地域でも同じことが言えると思います」

福岡に住んでみて、そこでビジネスを展開してみて、実際に感じた東京との違いは何だろう。

「福岡は民間と行政の距離が近く、ビジネスの面でも行政が協力的ですね。企業側にもビジネスをしながら地元に貢献する『シビックプライド』を醸成する環境がある。企業が単体で利益を上げて会社がよくなればいい、ということではなく、福岡の経営者は、福岡のためになることは何か、ということを、つねに頭の片隅に置いているように感じます。

また、人と人とのつながりが深く、人を紹介するという文化が根付いている。何か事を起こしたい時に、誰かに『こんなことをやりたい』と伝えると、『じゃあ、こういう人がいるから紹介するよ』という具合です。

移住計画についても知人に構想を話したところ、その人の知人を介して市の企業誘致の中心的な部署につながり、プレゼンテーションさせてもらえたんです。2ステップで行政の中枢につながるなんて、東京では考えられないことです」

※後編では「福岡移住計画」が現地でどんな活動をしているのか、余すところなくご紹介します。お楽しみに!

田中 純子 ライター

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たなかじゅんこ / Junko Tanaka

福岡在住のライター。旅行業界、インテリア業界を経験後、情報誌のディレクターとして九州各地を担当。その後、医療機関の広報誌編集を経てフリーランスに。現在、「いつまでも輝き続ける生き方」をテーマに、学び・仕事・ライフスタイルを中心とした「心のアンチエイジング」を研究中。また、地方の伝統文化について海外に情報発信することを目標に、英語の再学習にも取り組んでいる。

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