全国1万拠点のLUUP、成長のカギを握る"対策" イメージ悪化を防ぐ取り締まり強化で事業拡大へ

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電動キックボードというと行楽利用のイメージがあるが、通勤や買い物などの利用が8割を占める(筆者撮影)

規制との闘いから生まれた新制度

創業時のLUUPは、介護分野でのサービス展開を目指していた。「Uber Eatsのような仕組みで、介護士さんを短時間単位で派遣するサービスを考えていました」と岡井氏は振り返る。

LUUP代表取締役CEOの岡井大輝氏(筆者撮影)

しかし、構想を練る中で、根本的な課題に行き当たった。日本の都市部は鉄道網が発達している一方で、駅から離れた場所へのラストワンマイルの移動手段が不足している。介護士が効率よく移動できなければ、マッチングサービスも成り立たない。そこでまずは、移動インフラの整備に軸足を移すことを決断した。

2020年、同社は電動アシスト自転車のシェアリングサービスからスタート。より柔軟な移動手段として電動キックボードにも着目した。

LUUPは電動キックボードを免許なしで乗れる「特定小型原付」に区分する法改正に関わった(筆者撮影)

当時、電動キックボードは厳しい規制環境に置かれていた。原動機付自転車として扱われ、最高速度30キロメートル毎時での走行が可能だった一方で、運転には原付免許が必要だった。「この速度設定は国際的な基準と比べて高すぎます。諸外国でそんな速度で走れる電動キックボードは、ほぼ存在しません」と岡井氏は当時を振り返る。

同社は政府や自治体との対話を重ね、安全な規制のあり方を探るため、沖縄から北海道まで数十回にわたる実証実験を実施した。その結果として、2022年4月に改正道路交通法が公布。電動キックボードなどを対象とした「特定小型原動機付自転車」という新たな車両区分が設けられ、2023年7月から施行された。新制度では最高速度が20キロメートル毎時以下に制限される一方で、16歳以上であれば免許不要で運転可能となった。

同社が電動キックボードの導入にこだわった背景には、将来を見据えた戦略的判断がある。現在、車両は電動キックボードと電動アシスト自転車が半々の比率で展開されているが、電動キックボードには独自の優位性があるという。GPSの精度向上により、歩道走行の自動検知や速度制限など、技術的な制御が可能だ。また、構造がシンプルなため耐久性が高く、シェアリング事業の採算性にも優れている。

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