全国1万拠点のLUUP、成長のカギを握る"対策" イメージ悪化を防ぐ取り締まり強化で事業拡大へ

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技術面での対策も進められている。GPSの精度が向上すれば、歩道走行などの違反を自動検知し、強制的に速度制限をかけることも可能だ。すでに内閣府と実証実験を始めているが、現状では精度やコストの面で課題が残る。「足元では人的な取り締まりを強化しつつ、新技術の開発も並行して進めていく」と岡井氏は説明する。

「街じゅう駅前化」への展望

岡井氏が掲げるビジョンは「街じゅうを『駅前化』するインフラをつくる」こと。日本の都市は高度経済成長期に鉄道網が整備され、駅前に街が形成されてきた特徴がある。その結果、駅から離れた場所の不動産価値は相対的に低く、都市機能も駅前に集中しがちだ。LUUPはこの構造を変えようとしている。駅から離れた古くからある商店街や、魅力的な店舗へのアクセスを改善することで、都市の新しい回遊性を生み出す狙いだ。

「街じゅうを『駅前化』するインフラをつくる」をミッションとして掲げるLUUP(筆者撮影)

「徒歩30分の場所でもLUUPなら5~10分。街中にポートがあれば、駅から離れた場所でも駅前と同じような利便性で生活できる」(同氏)。マンションの入居者専用ポートを設置する例も出るなど、新しい都市の在り方への挑戦は着実に進んでいる。

都市部での展開に加え、地方でも新たな動きが始まっている。地元自治体や企業と協業し、その地域に合わせた台数や料金設定でサービスを提供。観光客が集中する季節だけポート数を増やすなど、大手交通機関では対応が難しい柔軟な運営を可能にしている。

事業としての手応えも出てきた。各エリアでの採算は確保できており、ポート数を増やすことで収益性は向上するという。ただし、企業全体としての黒字化については明言を避けた。

その一方で、創業時の構想でも広がりを見せている。最近では訪問介護事業者との連携も始まり、介護スタッフの移動手段としても活用され始めた。事業所に寄らずに直接利用者宅を訪問できるため、スタッフの稼働効率が向上。人材確保にもつながっているという。

「便利で安全なだけでなく、日常が少し楽しくなるようなインフラを目指したい」。岡井氏の視線は、すでに次のステージを見据えている。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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