中国の根強い「反日感情」裏にある"国民のリアル" 現地の学校教育に触れて感じた様々なこと
選挙権がないから政治は他人事だ。日本に対しても旅行先、留学先、転職先というように、自分の人生を豊かにするための選択肢の1つとして捉えている。
若者に限らず今の50歳くらいまでの中国人は超現実主義で、何事も進学や就職、昇進・昇給にプラスになるかに基づいて判断する。
筆者が中国の博士課程に在籍していた2010年代前半、共産党の思想の基盤にもなっているマルクス主義に関する必修科目がそれまでの倍に増えた。授業を担当する教員は「最近資本主義がはびこっているから、政府の方針で基本思想の教育を強化することになった」と説明した。
だが、政府が思想教育に躍起になっても現場ではあっという間に骨抜きにされる。筆者が期末のレポートに四苦八苦していると、中国人の同級生が「マルクスは中学生のときからやっているから対策はばっちり」と、レポートのテンプレートがぎっしり詰まったUSBを貸してくれた。「共産党宣言が短いからお勧めだよ。資本論は長いからやめたほうがいい」と言い添えて。
尖閣問題のさなかに日本語の授業
2012年には尖閣諸島の領有権を巡って日中関係が悪化し、成都で大規模な反日デモが発生した。
その頃筆者は、息子が通っていた現地小学校の校長から、総合学習の時間に日本語クラスを開いてほしいと依頼された。
日中関係が緊張し、「日本人と分かったらタクシーで乗車拒否される」という噂も流れていた時期なので、日本語なんか教えたら保護者から苦情が来るのではと心配したが杞憂だった。息子の担任教師には、「あなたが授業を代わってくれるから、その時間に自分のやりたいことができる」と感謝された。
同じころ、警察に引っ越しの届け出に行くと、女性警察官に「尖閣問題をどう考えているか」と聞かれた。「国と国はいろいろ問題があるけど、私は中国人の友人とうまくやっているし、政治のことは気にせずやるべきことをやるしかない」と答えたら、警察官は頷きながらパスポートを返してくれた。
国同士の関係がどうであっても、生活に特段の変化はなかった(尖閣諸島のごたごたのときは、日本語を大声で話さないように多少は構えたものの)。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら