もう無理!運動の限界を決める「脳のメカニズム」 パフォーマンス最大化する「覚醒ゾーン」とは?
そうすると、「もう無理だ!」となって運動を続けられなくなるのです。「苦しい、つらい」によって運動意欲が削がれた状態です。最後の最後、運動を制限してしまうのが情動なんですね。
ラットの実験でわかったメカニズム
――負のスパイラルからはずれて苦痛を感じなくなれば、強度が高い運動をもっと長い時間続けられるのですか。
ラットの実験で、扁桃体を破壊する前と破壊した後では、破壊後のほうが運動パフォーマンスが上がったという研究結果があります。おそらく、扁桃体の機能が抑制されることで交感神経の活動も抑えられ、筋肉の血管が収縮しにくい状態になっているからだと思います。
つまり運動をあきらめるほどの「苦しい、つらい」という感情の発生に遅れが生じているのでしょう。
――扁桃体の動きを抑えて、苦しい感情をできるだけ感じないようにして運動パフォーマンスを上げることはできるのでしょうか。
扁桃体はいわばリミッター(制御装置)です。筋肉に過剰な負荷をかけて体を痛めることがないように、そして命に危険が及ぶような生理的限界を超えないようにするためのもの。つまり、なくてはならない存在です。
ただトップアスリートなどは競技中のミスで動揺(情動が変化)して、運動パフォーマンスが落ちることがないよう、失敗しても対戦相手にリードされても、平静を保つ、あるいは「とにかく勝つぞ」と闘争心を維持することができるように、メンタルトレーニングを積んでいるということはあります。
最大の運動パフォーマンスを発揮するには、リミッターをはずすことではなく交感神経と副交感神経のバランスが大事だと考えます。副交感神経が活性化しすぎて落ち着きすぎると、やる気や集中力が落ちてしまいます。
一方、交感神経が活性化しすぎた状態では、緊張や力みでいつもの動きができなくなってしまいます。このメカニズムはよくわかっていませんが、交感神経は筋肉内にあるセンサで、筋の緊張状態を調節している筋紡錘も支配していることが報告されています。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら