“コバホーク”と呼ばれる小林鷹之氏の8月19日の出馬表明から、告示直前の上川陽子外相の出馬表明などによる告示前までの25日間に、選挙戦15日間を加えた計40日間の次期首相の座を巡る戦いは、多くの曲折の中で、石破、高市、小泉各氏が“3強”として脱け出し、最終盤には事実上確定していた「決選投票」をにらんで、各陣営が「未知との遭遇のような複雑怪奇な神経戦」(自民長老)を展開したのが実態だ。
そもそも最終決着の場となった27日午後1時からの「1回戦」とそれを受けての「決選投票」にも、多くのドラマが見え隠れした。
まず、国会議員368人と党員・党友による地方票(368票をドント方式で配分)の合計で争う「1回戦」では、高市氏が予想を超える181票(議員票72、党員票109)を獲得してトップに立ち、石破が154票(議員票46、党員票108)で2位、候補者討論で失速した小泉氏が議員票はトップながら136票(議員票75、党員票61)の3位となり、その時点で総裁レースから脱落した。
他6候補の得票をみると、討論会での安定感が目立った林官房長官が65票で4位、序盤戦では大躍進もささやかれた小林氏が60票で5位、旧茂木派領袖だった茂木敏充幹事長(68)は党員票が伸びずに47票の6位、一時は有力候補とされた上川陽子外相は40票で7位、前回総裁選で岸田氏とトップ争いを演じた河野太郎氏(61)は党員票がわずか8票での30票で8位に沈み、党内に幅広い人脈を誇っていた加藤勝信元官房長官(68)は議員票が推薦人(20人)にも届かない“醜態”もあって22票での最下位となった。
「1回選」での高市氏トップに会場内騒然
この結果の中でも、会場内の議員達と取材席のメディア各社記者を驚かせたのが、高市氏のトップだった。というのも、直前のさまざまな情報では、石破氏1位、高市氏2位が「通り相場」だったからだ。確かに、選挙戦終盤で党員・党友票で猛烈な追い上げが伝えられていたが、高市陣営も「まさかトップに躍り出るとは思わなかった」(幹部)と驚きを隠せなかった。
その時点で、高市陣営は「これで勝てる」(同)とほぼ確信したとみられ、高市氏も隣席の中曽根弘文元外相らと笑顔でささやき合っていた。その一方で、「想定外」の2位となった石破氏は、決選投票での逆転にすべてを賭けるべく、唇を真一文字に結んで虚空をにらんだ。そして、脱落が決まった小泉氏は大きく息を吐いて壇上での発表結果を見つめていたが、その眼には悔し涙が潤んでいた。
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