為替変動の震源「円キャリー取引」は終わったのか まだ高い円売り魅力度、金利だけでない円安要因

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円キャリー取引の動向を推し量る上で参照されることの多い指標が、アメリカ商品先物取引委員会(CFTC)が公表するIMM円先物のポジションだ。

IMM通貨先物はシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)に上場されている商品で、このうち非商業部門の円売り(ショート)と円買い(ロング)を差し引きしたネットポジションが、狭義の円キャリー取引といえる投機筋の円売りを表すとされている。2021年以降の円安局面ではドル円レートと連動してきた。

非商業部門のネットポジションは、2021年3月から売り越しが続き、2024年4月以降、大きく円売りポジションが膨らんだ。7月上旬の約2兆円をピークに縮小し、8月13日以降は買い越しに転じている。

ただし、これをもって「円キャリー取引は解消された」とは結論づけられない。

「通貨先物は氷山の一角に過ぎない」――。8月上旬の円キャリー取引巻き戻しについて分析したBIS(国際決済銀行)レポートはこう指摘する。円キャリー取引の手段としては、先渡し契約やスワップなどさまざまな手段があることを挙げた上で、日本から円建てで貸し出される資金の統計を基により広い意味での円キャリー取引の規模をさまざまな形で類推している。

取引の魅力度は低下局面に入った

円キャリー取引の規模やその動向を直接捉えることは難しいが、相場環境から傾向を推測することは可能だ。

運用成果が上がるために必要な要素は、十分な金利差があることと、為替のボラティリティーが低いことだ。ボラティリティーが重要なのは、日米金利差で収益が得られても、その間に円高が進めば最終的な収益が損なわれるからだ。

前出の東深澤氏は、投機筋にとっての円キャリー取引の魅力度を算出している。日米金利差(3カ月)をドル円の予想変動率(3カ月)で割り引いた。この指数(赤線)を2022年以降について、2つの要因に分解したものが下の図だ。

2022年以降、アメリカの利上げで金利差が一気に拡大し、魅力度が高まった。利上げは2023年7月で打ち止めとなり、その後の1年間は金利差が高止まりする中、為替のボラティリティー低下が円キャリー取引の魅力度を高めた。

7月下旬以降、為替のボラティリティー上昇が金利差の魅力度を損ないはじめ、さらにアメリカの利下げが確実となって金利要因も縮小しつつあることが見て取れる。

では、この先どんどん魅力度が下がって円キャリー取引の巻き戻しが進み、円高に振れるのだろうか。

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