ダイソン「オーディオ参入」にストーリーはあるか 競争が激化する中で新規参入を決めた意図とは
そうした中で、一般的には掃除機と空気清浄機、それにヘアケア製品で知られるダイソンが、なぜOnTracを発売したのか? よほどの自信があるのか? 製品だけではなく、ビジネスの組み立て方やマーケティングの視点で気になっている方もいると思う。
OnTracの開発をリードしたのは、Dyson Zoneと同じくダイソンの最高技術責任者であり取締役でもあるジェイク・ダイソン氏だ。ご存じ、創業者ジェームズ・ダイソンの長男であり、後継者とみなされている人物。ダイソンは現在も私企業であり、ダイソン家のファミリービジネスだ。
社会問題を解決するための商品
ファミリービジネスであることの利点として、ジェイク・ダイソン氏が話していたのは目先の収益を追うのではなく、社会問題を解決するために実験的な技術を開発し、それを商品化に向けてドライブできる決断を下せる点をDyson Zoneの時に強調していた。
しかしながら、OnTracにはそうしたストーリーが見つからない。
いや、正確にいうならばジェイク・ダイソン氏は、それについて説明はしているが、腹落ちしてこないというほうが正しいだろう。
OnTracと掃除機やヘアドライヤーとヘッドホンに共通点はないように思える。しかし、ジェイク・ダイソン氏は「すべては空気の流れをコントロールすることから始まる」と語る。ダイソンは空気清浄機やヘアドライヤー、掃除機などの製品開発において、リソースの20%が騒音低減など、音響技術の研究開発に費やされており、そうした音響技術開発がOnTracの開発に生かされていると話した。
この説明には聞き覚えがある。
なぜなら、Dyson Zoneの際に同じストーリーを聞かされたからだ。
OnTracの最大の特徴として圧倒的なノイズキャンセリング性能があるという。各イヤーカップに配置された計8つの高精度マイクロフォンが外部の音を精密に捉え、最大40デシベルまでの外部音を、97%のオーディオ周波数で遮断するという。なかなか複雑な説明だが、最大40デシベル低減できる特定の周波数があり、可聴帯域の97%において低減効果をもつということなのだろう。
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