真田が徳川家康をモデルにした「虎永」を主演し、細川ガラシャがモデルの「鞠子」はサワイが演じ、ほか石田三成がモデル役の平岳大や、家臣役で浅野忠信が登場するなど、興味を引く要素は十分に揃っています(参考記事:ディズニー本気の「SHOGUN 将軍」意外な見どころ)。ですが、戦国時代の物語そのものは日本人にとって新鮮味を感じにくいものです。同じ原作で作られた1980年代版のリバイバルの効果もそれほど影響していませんでした。
何より視聴環境が限定されています。日本市場ではNetflixやAmazonのプライム・ビデオほどDisney+はシェアを伸ばしていません。Disney+独占配信ドラマという条件がハードルを上げたとも言えます。肌感覚に過ぎませんが、配信サービスの利用に慣れたユーザーを乗り換えさせるような勢いはその時点ではなかったように思います。
ほぼ日本語というリスクをとった
今回の受賞で改めてドラマ「SHOGUN将軍」に興味を持った人は多いはず。スケールの大きい架空の世界を舞台に権力闘争を描く「ゲーム・オブ・スローンズ」や私利私欲にまみれた骨肉の後継者争いが売りの「メディア王~華麗なる一族」など過去のドラマ部門のエミー賞受賞作はもちろん傑作揃いです。ドラマ「SHOGUN将軍」も人間関係の描き方はこれらと負けず劣らずで、系譜をしっかりと継いでいます。
本物志向を意味する“オーセンティシティ”にこだわった作品でもあります。製作したウォルト・ディズニー・カンパニー傘下の「FX」会長のジョン・ランドグラフ氏から直接聞いた言葉からも裏付けることができます。「日本以外では知られていない歴史上の人物をモデルにした物語を世界中の視聴者に届けるために、これまでにないクオリティでオーセンティシティを追求したいと思った」と語っていました。
実現するために予算をかけていることは、ウォルト・ディズニー・カンパニー最高経営責任者のボブ・アイガーがエミー賞のレッドカーペットインタビュー時の発言から読み取れます。「予算は高めだったが、クリエイター陣の手腕を信じた」と言及していたのです。ハリウッドの高額予算のドラマは1話数十億円規模に上ることから、最低でも1話あたり20億~30億円、下手すると50億円規模だった可能性があります。
大きな投資になったことは間違いないでしょう。金額のうえでも賭けに出たと言えますが、全10話うち7割が日本語のハリウッド作品だったことこそリスキーだったのかもしれません。ボブ・アイガーがこれを認めています。「ほぼ日本語の作品というリスクをとった」とも発言していました。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら