「月収2万」の元部活動指導員が教師を目指した「お金だけじゃない」理由 吹奏楽顧問「生徒と音楽作るうえで大事なこと」

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部活動指導員として吹奏楽部を10年指導したのち、「教員として部活指導がしたい」と一念発起して教員免許を取得、正規教員となって17年目を迎えた先生がいる。元は調理師専門学校に通い料亭で修業していたという異色のキャリアを持つ海老名市立海老名中学校教諭の上髙原拓也氏だ。なぜ部活動指導員から教員を目指したのか。前編では、その背景や、教員としてのやりがいについて迫る。

海老名駅から歩くこと約15分。駅前のショッピングモールや映画館を抜け厚木街道を曲がると、色濃い緑の中に海老名中学校が見えてくる。教諭で吹奏楽顧問を務める上髙原氏は、「時間を何度も調整いただいてすみません」と物腰柔らかな様子で出迎えてくれた。

上髙原氏が顧問を務める海老名中学校吹奏楽部は、コロナ禍で中止となった翌年、2021年の吹奏楽コンクール中学校A部門で全国大会に出場。2022年、2023年はいずれも東関東大会で金賞と、いわゆる“強豪校”の活躍を見せている。

「コロナ禍で部活動の練習時間が制限され、千葉の強豪校と練習量がそろった」ことも全国大会に出場できた理由の1つであると、上髙原氏は冷静に分析する。千葉県には吹奏楽の強豪校が多く、全国大会の東関東支部枠がすべて千葉の学校で埋まることも珍しくない。

「千葉は小学校のクラブ活動も盛んで、小さい頃から楽器に触れている子どもが多いので、なかなか追いつかないという気持ちがありました。ただ、感染防止のために短時間練習となり、また前年のコンクールは中止になっていたので、スタートラインがそろったのかもしれない、こういう時にチャンスがあったりするよと生徒に話していました」

上髙原拓也(かみたかはら・たくや)
海老名市立海老名中学校 教諭

練習時間が少なくなったのは、コロナ禍だけが要因ではない。2018年に文化庁から発表された「文化部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」(以下、部活動ガイドライン)では、「学期中は週当たり2日以上の休養日を設ける」「1日の活動時間は、長くとも平日2時間、休日3時間まで」などの指針が示されている。

昨今の部活動の練習状況について、「コロナ禍における練習時間の制限のほうが、部活動ガイドラインよりもさらに厳しかったですね。そのため、ガイドラインの基準がスムーズに受け入れられたのでは」と考察する上髙原氏。基本的には部活動ガイドラインや市の方針に沿って練習を行っているが、他校との合同練習を実施する際や演奏会・コンクールの2週間前からは例外的に1日練習が認められることもあるという。

「牛丼バイト」と掛け持ちで続けた、月収2万の外部指導員時代

もともとは調理師専門学校に通い、料亭で修業したこともあったという上髙原氏。ただ「部活のために学校に通っていた」というほど学生時代に吹奏楽にのめり込んだ経験から、音楽の道に再び挑戦。音楽系の専門学校に入り直し、吹奏楽の指導と演奏の勉強をしながら、県の嘱託指導員として有馬高校やそのほかの学校の吹奏楽部の指導にも関わるようになった。

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