ある一定量を定期的に食べることが大事だ--『腸!いい話』を書いた伊藤 裕氏(慶応義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科教授)に聞く
──最初の腸内細菌はどこから。
母親から来ることが多い。いちばん最初にコンタクトしたものが入ってくるから、母乳などだ。それで決まるならば、その人の人生にまた母親由来の部分が大きく作用することになる。これは新しい発見につながるのではないか。
逆にその人の腸内細菌を総入れ替えしようとしても、これがなかなか難しい。他人の腸内細菌に対して拒否反応を示すことはわかっている。それこそ三つ子の魂百までではないが、最初に出た「抗体」をその人は一生引きずることになる。食事の内容で一部は変わっていくが、それは細菌の比率が変わるだけで一変するわけではない。ある意味で自分の体の一部分になってしまっている。
──病気治療への応用は。
大いなる研究テーマだ。動脈硬化になりにくくする腸内細菌があれば、それを食べることで病気のかかり方に違いが出る。人のゲノムが解明されて、今米国では人が持っている腸内細菌の遺伝子を解明しようと真剣に取り組まれている。あれやこれや新たなメカニズムがわかれば、新しい発想での病気治療法が生まれてくるかもしれない。
──「腸を鍛える」ヒント10カ条も収録されています。
10カ条全体を通していえるのは、「決まった時間に物が通っていく」のが大事だということだ。つまり食事は食べる時間を決めておき、だらだら食べ続けない。食べ続けると、空腹のときに出るはずのホルモンが出ない。ホルモンにも出る順番がある。食べ物がここに入ってきたら、このホルモンが出る。ここまできたらこちらのホルモンは休む。そういう一連のリズムが決まっている。リズムを変則にするのは、その人の体にも腸内細菌にとってもよくない。とにかく定期的にある一定量を食べることが大事だ。