伊藤忠の文書流出「平社員でも年収2000万」の真偽 給与制度改定の文書に「雇われたい」とSNS沸騰

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伊藤忠商事の従業員は連結ベースで11万3700人いらっしゃいます。彼らが勤務するのは伊藤忠のグループ会社や投資先の子会社です。そしてそのような会社で働くひとたちの給与水準はそれぞれの業界の水準と変わらないものです。

これはよくある「子会社の待遇は親会社とは全然違う」というものでもあるのですが、もう一歩踏み込んでいえば、それらの会社が利益を生むことで、その総計が伊藤忠商事の高い業績になっているという構造があるのです。

スキル面でいえば、高い投資利益を生む伊藤忠商事の少数精鋭の社員には非常に高いビジネススキルが求められる一方で、現場で利益を生む子会社・事業会社の社員にはそれぞれの業界での専門スキルがあればいい。

言い換えれば伊藤忠商事の正社員は投資家でありプロ経営者の仕事です。一方で伊藤忠商事のグループ会社の社員はそれぞれの事業の従業員です。当然ながら子会社の社員の報酬は世間並に落ち着くわけです。

優秀な社員にあまり報酬を払わない企業は生き残れない

さて、最後にまとめさせていただくと、伊藤忠だけでなく総合商社3社は日本企業の中でも突出して報酬が高いことで知られていますが、これは日本経済でみればもっと真似されるべき状態だと思います。

世界全体で時代は人的資源経営へと移り始めています。優秀な社員にそれほど報酬を払わないでこき使う企業は長くは生き残ることができない時代です。その前提を考えると、他の上場企業でも、会社にとって重要な貢献をするヒラ社員に2000万円の報酬を与えるという制度は積極的に導入すべきなのではないでしょうか。

貢献に報いるという意味でも、会社を長期的に成長させていくという意味でも、それは大切な新しい考え方だと、今回の流出事件を通じて私は感じます。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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