日本郵政、念願の上場後に待ち受ける懸念 大量の「非正規雇用者」が反乱を起こす?
現在進行中の郵政での裁判・労働委員会事案は、郵政ユニオンが把握しているだけでも14あるという。以下、並べてみると
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①郵政・労働契約法20条裁判
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②非正規社員の65歳解雇無効裁判
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③さいたま新都心郵便局過労自死裁判
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④神奈川県 青葉郵便局雇い止め・解雇撤回裁判
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⑤東京都 銀座郵便局再雇用拒否撤回裁判
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⑥日本郵便本社・解雇撤回裁判
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⑦千葉中央郵便局雇い止め・解雇撤回裁判
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⑧広島県 福山郵便局セクハラ・パワハラ裁判
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⑨北海道 空知郵便局労災認定却下撤回裁判
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⑩北海道 滝川局不当労働行為(労働委員会に訴え出た案件)
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⑪北海道 苫小牧局不当労働行為(同)
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⑫埼玉県 越谷郵便局不当労働行為(同)
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⑬ゆうちょ銀行エキスパート社員解雇裁判
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⑭日本郵便輸送不当労働行為(同)
このうち、今後大きな拡がりを見せる可能性があるのが①の労契法20条裁判。同法20条は、非正規雇用であるということ以外の理由がない場合、労働条件が「不合理であるとみとめられるものであってはならない」とする法律だ。
待遇に不合理な差別があるとして、11人の時給制契約社員と1人の月給制契約社員の計12人が日本郵便を訴えている。たとえば、集配・集荷は非正規労働者と正社員が混在して作業しているが、2輪車で集配・集荷をすると正社員には「外務業務手当」として1日最低1090円が支給される。
ところが期間雇用社員には何も支給されない。また、祝日出勤すると、正社員には日給分の135%が上乗せ支給されるが、期間雇用社員だと上乗せ額は35%に抑えられている。
非正規雇用20万人の存在
この裁判のゆくえが上場後のリスクになりそうなのは、非正規社員がグループ全体で約20万人と多いうえに、この法律の性格上、法廷で「労働条件が不合理」だと判断されれば、ほかのすべての非正規労働者と契約を結び直さなければならないことになっているからだ。つまり、この裁判で1人当たり年1万円分の待遇改善が認められれば20万人分の計20億円の人件費アップ要因になる。同10万円なら200億円である。
同様の裁判では、地下鉄の非正規労働者が原告のメトロコマース訴訟や、非正規雇用の運転手が原告のハマキョウレックス訴訟がある。メトロコマースは現在係争中。ハマキョウレックスは1審判決が最近出た(原告側は控訴)。それは、交通費の違いしか認めないという、郵政ユニオンが支援する労契法20条裁判にとっては、厳しい内容だった。
中村書記長は「ハマキョウレックスの判決はわれわれにとっていい判決ではなかったが、『それはそれとして受け止めてがんばっていこう』と励まし合っている。20条訴訟はどんな判決が出ても、原告、被告のどちらかが控訴して最高裁まで行くだろう。支援する会では『10年戦争だ』と言っている」と長期戦を辞さない構えを見せている。
東京地裁と大阪地裁の2つの裁判所で同時に行われている20条訴訟は、森博行弁護士、棗一郎弁護士、水口洋介弁護士など名だたる労働専門の弁護士が原告弁護団に名を連ねる。一方、被告弁護団は東西とも大手法律事務所の森・濱田松本法律事務所が受任した。東洋経済の取材依頼に対して、原告弁護団の弁護士2人は快諾したが、被告弁護の大手法律事務所は「お受けできかねます」として応じなかった。
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