【産業天気図・造船】受注残3年以上抱えフル操業、建造量は史上最高を更新へ

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造船業界は豊富な受注残を抱え、目下フル操業状態にある。日本造船業工業会会員会社ベースの2006年6月末受注残は5525万総トン(05年末比6.5%増)に達し、7年連続で拡大が続いている。各社とも3年以上の受注量となっており、中でも佐世保重工業<7007.東証>は4年先の10年央まで受注を確保している。建造量は02年に底をつけてから拡大続きだが、06年では1800万総トン(前年は1643万総トン)に乗せ、史上最高を更新しそうだ。
 一方、受注は各社とも豊富な受注残を抱えていることで採算重視に徹してきたため、04年の2886万総トンをピークに減少が続いてきた。ただ06年は各月とも前年を上回るペース。06年1~6月に1130万総トンとなったことから、年間では05年の1650万総トンを抜いて回復に転ずる可能性が高い。依然として船舶需要が強いことが背景だ。
 しかし、採算的には円安時に受注した低船価船が売り上げに立つため、まだ厳しい状況。三菱重工業<7011.東証>、川崎重工業<7012.東証>、石川島播磨重工業<7013.東証>など大手は部門赤字が続く見通しだ。佐世保重工はパナマックス級など中型船に特化した連続建造による量産効果で黒字を維持。同じく中型船に特化しトヨタ生産システムを導入して効率を上げる住友重機械工業<6302.東証>も黒字転換を見込んでいる。最近の円安進行で大手の中には黒字転換の可能性も出てきたが、06年度はまだ過去の赤字船の影響が残る年と言えそうだ。こうしたマイナスの影響は今年でほぼ終わり、来07年度からは高船価船が売り上げに立ち、各社とも黒字化が見込める。08年度はさらに利益が拡大し、名実ともに造船ブームに突入していくことになりそうだ。
【田中房弘記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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