マスプロ電工の苦悩と再挑戦 地デジ特需後に非上場化

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株価は将来の苦境を先読みし、今年6月には583円という安値をつけている。昨年11月15日には発行済み株式の7・16%を保有する第3位株主だったデンソーとの資本提携解消を発表。このときも当日終値763円が翌日終値650円まで急落するショックを味わった。

デンソーや金融機関が大量の株式を売り出したため浮動株比率(50単位未満の株式を保有する少数株主の持ち株比率)は10年3月末の19・9%から11年3月末には22・6%へ上昇している。7月24日以降の業績悪化が明らかになればさらなる株価下落が予想され、敵対的買収の格好の餌食になりかねない。こうした事情に押される形で端山社長はMBOを決断した。

MBOの目的は新事業の育成

非上場化後のマスプロは、これまで培ってきた電波技術を応用し、テレビ以外の新事業の立ち上げに経営資源を集中させる予定だ。

まず期待のエースは「ミリ波パッシブ撮像装置」。人体などから放出される微弱な電波を受信することで異物を検知できる装置だ。X線を照射する検査装置とは異なり人体への悪影響がなく、たとえば妊婦への検査も問題なく行える、という利点がある。東北大学、中央電子と共同開発を進めており、今年度内には空港への設置が進む見通しだ。

ミリ波技術は業務用の大型装置だけでなく、一般家庭用の小型機器の展開も進めている。留守宅への不正侵入を検知するセキュリティ機器もその一つ。同社にとって、ホームセュリティ市場参入第1弾の製品だ。

アナログ放送で使っていた周波数帯の一部を用いる高度道路交通システム(ITS)分野にも食い込むべく研究開発を進めている。主力工場である高蔵寺ニュータウン工場(愛知県春日井市)に隣接する敷地と建屋を買い取って改修したR&Dセンター内に、自動車を丸ごと入れられる大型の電波暗室を備えた電波測定棟を新設。自動車メーカーなどと協力し、自動車の安全に役立つ通信機器を開発していく。

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