ちなみに私自身、乗り鉄の楽しさに目覚めてからは夜行列車には多く乗車した。廃止になる前に乗っておこう、というモチベーションで乗ることも多かった。
乗車したことがある夜行列車で特に思い入れが深いのは寝台急行「銀河」だ。CDリリースに伴う大阪でのプロモーション活動を終えて東京に戻る際、新幹線の特急券を窓口で変えてもらい、銀河の狭い開放B寝台に体とギターを横たえて眠った。乗っている最中に曲を作ろうとは思ったことはないが、冒頭の文章のように揺れや、車窓の景色などを帰ってから反すうして、曲へとつなげていくことも多かった。
完全乗車を目指して全国を旅してみて感じたのは、列車旅における「旅情」とは料理でいうところの「うまみ成分」のようなものだということ。深い余韻をもたらすなにかが夜行列車にはたっぷり詰まっているから、単なる移動する手段としてだけでなく、愛着を持って夜行列車を選択している人がいるのではないだろうか。
夜行列車全盛時代の空気が感じられる8曲
私より少し年上の世代では、夜行列車といえば寝台ではなく座席列車を思い浮かべる人も多いと聞く。「十和田」「八甲田」などで北海道を目指し周遊券を使い倒す旅をしたとか、現在のムーンライトながらに通じるいわゆる「大垣夜行」の列車の床に新聞紙を敷いて疲れをやりすごしつつ西へ向かった、という方もいたようだ。居心地も悪く不便だったと聞くが、他人同士の距離が近くいい意味でアバウトな時代。今でも笑い話とともに味わい深く思い出されるなにかが、やはりそこにあったのだろう。
「上野発の夜行列車」という出だしで始まる歌もあるほど、夜行列車というモチーフは日本の歌世界に数多く登場し、旅情をつづる舞台となってきた。聴き鉄シリーズラストの今回は、そんな中でも私が敬愛してやまないフォークの名曲たちを挙げてみることにした。日本の高度成長期、夜行列車全盛のころの空気が封じ込められ、味わい直すことがきっとできるはずだ。
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