夜行列車「女ひとり旅」で出会いはあるのか?

女として決心したあの日

そこからやりとりしているうちに、なんと東京では隣同士の駅に住んでいることが判明。年も近いことがわかり、すっかり打ち解けてしまった。爽やかだし、よく見れば外見も悪くない。聞けばなんと今回一人でA寝台ロイヤルに乗っているという。A寝台に乗っているので今後彼をAさんと呼ぶことにする。

私も「復路はA寝台を狙ったのだが取れなかった」と言うと「10年前から北斗星に乗ってますけど、A寝台が取れたのは初めてですよ」とAさん。「部屋、見に来ます?」と言われ、ちょっと警戒心を抱いたものの、A寝台ロイヤルを見てみたい欲求には勝てず入らせてもらった。

すっかり意気投合したが……

洗面台などは、はやぶさの方が好みだったが、ウェルカムドリンクやシャワールームなど、初めて見る設備に私は興奮状態。しかもワインは飲まないということで、ウェルカムドリンクのワインは私が全部いただいた。危険じゃないか?と思われるかもしれないが、Aさんはその間、ドアをずっと開けたままにしていてくれたのだ。なんという紳士的な振る舞いだろう。こんな出会いもあるのだ。Aさんをすっかり信用した私は、お互いに携帯の番号を交換し合い、また東京で会う約束をした。

そしてしばらくして約束通り連絡が来た。いそいそと準備して待ち合わせ場所に向かった私だったが……。

Aさんは列車の中で会った時の印象とまるで違っていた。北斗星では白いシャツにGパンが似合う爽やかなイメージだったが、目の前にいるのはヨレヨレのTシャツに無精髭が伸び放題の男性。しかもお互い伝えていたのは名前だけだったのに「漫画家なんですね。漫画家って儲かるらしいですねー」などと話し出したではないか!

調べていても知らないフリをしてくれればまだ良かったが、いきなりそんなことを言われ、ゾワゾワっと鳥肌がたった。北斗星の車内では話が途切れなかったのに、一言も話したい話題が見つからない。もうダメだ。

1時間もしないうちに私は携帯に電話がかかってきたフリをして逃げた。昔、スキー映画が全盛の時代によく使われた言葉「ゲレンデマジック」
が、寝台列車でも当てはまるとは……。これから寝台列車に乗るときは気をつけよう。

とはいえあのカシオペアで「展望スイートに一人で乗っているけど、見に来る?」なんて言われたら、やはりついて行ってしまうかもしれない。

次ページ念願の「カシオペア」ではどんな出会いが?
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