ドル円相場は改善傾向もデジタル赤字なお要注意 為替の行方を基礎づける円の需給環境を再確認

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もっとも、後述するように、キャッシュフロー(CF)ベースで見た経常収支も明らかに改善傾向を辿っており、需給面で見た円相場の脆弱性は過去2年間と比較すればかなり修復されているといってよいだろう。以下でCFベース経常収支の現状を整理する。

半期のCFベース経常収支はほぼ均衡

第一次所得収支黒字における円転率を調整したうえで筆者が試算したCFベース経常収支は2024年上半期で2754億円の若干黒字となっている(図表:CFベースの経常収支実情)。ほぼ均衡と言って良いだろう。

キャッシュフローベースの経常収支

 

上述した通り、第一次所得収支黒字が統計上で19兆1969億円と巨額に膨らんでいるため、CFベースでも応分の円買いが発生しており、筆者試算では約6.8兆円の円買いにつながっていると推計される。

一方で貿易サービス収支の赤字が約4.4兆円であるため、全体として若干円買い優勢の仕上がりにつながっている。貿易サービス収支に関して言えば、貿易収支赤字が前年同期の約5.2兆円から約2.6兆円へ半減していることが大きいものの、懸案のサービス収支赤字も約2.1兆円から約1.8兆円へ若干改善している。

デジタル赤字を基軸とするその他サービス収支は約3.3兆円から約4.1兆円へ赤字が拡大しているものの、旅行収支黒字が約1.6兆円から約2.6兆円へ黒字幅が1兆円も拡大しており(もっともこれは2023年3月まで水際対策が敷かれていた反動である)、結果としてサービス収支赤字の拡大が抑えられている。

2024年上半期をまとめると、鉱物性燃料輸入の減少とインバウンド需要の拡大で需給環境の改善が図られた半期だったといえる。今後のドル円相場に対する含意としては、こうした需給環境の改善に加えてFRBの利下げに応じた日米金利差の縮小も勘案する必要があるため、このまま150円台に復帰するという展開は難しいと筆者は考えている。

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