井上礼之・ダイキン会長兼CEO--「あかんたれ」が空調世界一、人好き・帰属感・衆議独裁《上》

花形の営業職を希望したが、配属先は、淀川製作所の総務課庶務係。プライドもやる気も消えうせた。

入社1年後、嫌気が差して会社を無断欠勤した。「本気で辞めよう」。酒と麻雀の日々。が、「人とワイワイガヤガヤやっておらないと寂しい。あかんたれなんでしょうな」。10日後、恐る恐る出社した。何とおとがめなし。同じ釜の飯を食った仲間として受け入れてくれた。その包容力、帰属する場所があることの心地よさ。ダイキンイズムに共鳴した。

「人が好き、人の集まるのが好き」という素地は、父・吉之の影響を大きく受けている。「父親っ子」は39歳のとき、8月に父を亡くした。その秋は悲嘆に暮れた。いちばん好きな季節だった秋が嫌いになった。

京大農学部教授だった父は「大の議論好き」。「ロンド(輪舞曲)」と称して、自宅によく学生を招いた。いわば知的サロン。小学生だった井上も輪に加わり、「内容はわからんけれども、熱いディスカッションの中で一つの方向性を見いだしていく」楽しさ、ダイナミズムを体感する。帰属する場所があって初めて、自由な発想が生まれ、人の本来の力が発揮される、という原体験だった。

帰属意識が生まれると、人間好きの井上にとって総務・人事という部署はドンピシャの職場となった。

公害を訴える農民との交渉や、官僚的だった人事部の立て直し。その仕事ぶりに、麻雀狂の若手が心を動かされた。人事部に配属されて3年目の十河政則(現社長)。「提案書が翌日真っ赤に添削されて返ってくる。家でやってはるんやろうなあ」。

淀川工場では共産党系の労働組合が強かった。その相手からもしっかり学んだ。「まじめによう働く人が左翼思想に心酔した。一人ひとりのために汗を流す。彼らは人事異動でも、おまえはこれでいいのかと全員を回る。ものすごく教えられた」。

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