絶好調の日産に忍び寄る中国市場の異変 「新車販売はどんどん悪くなっている」

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中国向けの専用モデルで、10月に発売する「ラニア」。20代、30代の取り込みを狙っている。

販売拡大に向けて、「待望の新車」(関専務)として期待を寄せるのが、今年8月に投入する新型SUV「ムラーノ」と10月発売の新型セダン「ラニア」だ。中国市場への日産ブランドの新車投入は14年3月の「エクストレイル」以来1年5か月ぶりとなる。

この2車種は今年4月に、カルロス・ゴーン社長が3年振りに中国のモーターショーに登壇し、大々的にアピールした戦略車種だ。特に「ラニア」は中国の若者向けに開発された初のモデルで、開発初期の段階から若手の中国人デザイナーがかかわった。消費を牽引する20代、30代の取り込みを狙う。

「目標はギリギリなんとか守る」

中国事業を統括する関専務は、今年5月の決算会見の場で、「(販売目標の)130万台を確実に上回るペースでここまで来ている」と自信を見せていた。しかし、今回の第1四半期決算の会見では、「競争の激化は間違いなく増している。足元が非常に厳しいだけに、あまり楽観はできない。130万台ぎりぎり何とか守っていくが、そんなに余裕はない」と大きくトーンダウン。市場全体が3カ月連続で前年割れなだけに、弱気になるのもやむを得ないところだろう。

日産は中期経営計画で、2016年度に世界シェア8%、営業利益率8%の目標を掲げている(今第1四半期ではそれぞれ、5.9%、7.0%)。田川丈二常務執行役員は、販売増加やコスト削減に加えて、販売金融やアフターセールスなどの収益力強化を通じて、「会社の総合力で(営業利益率に)あと1%の上乗せを目指す」と述べた。

目標達成に向けて、重要な中国市場での取りこぼしは許されない。市場に陰りが見られる中、新車投入で日産の販売が再び勢いを取り戻すきっかけとなるのか。それとも市場の落ち込みに引きずられるのか。毎月発表される中国の販売統計がこれまで以上に注目を集めることになりそうだ。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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