「忘れられる権利」に検索サイトの深い悩み 課題は対応コストの負担が大きいこと
[東京 16日 ロイター] - 過去の個人情報をインターネット上から消去する「忘れられる権利」をめぐる訴訟が日本でもじわりと増えている。グーグル<GOOGL.O>やヤフー<4689.T>など検索事業者は独自の基準を設けて削除を行っているが、「知る権利」との関係で微妙な判断を迫られるケースも少なくない。
総務省は民間各社の自主対応を促す構えだが、将来的には削除判断などに必要なコストを誰が負担するのかという難しい問題も浮上しそうだ。
検索事業者に一定の責任認める
欧州では2012年から個人情報保護などの「データ保護指令」を規則に格上げする検討を続けており、その中で「忘れられる権利」の概念が議論の対象になった。この最中の2014年5月13日、欧州連合(EU)司法裁判所は、不動産を競売にかけられたという個人情報がネット検索で表示されるのは不当だとしてスペイン人男性がグーグルなどを訴えた訴訟で、男性の主張を認める判断を下し、「忘れられる権利」の先行判決として注目を集めた。
この訴訟でグーグルは、検索結果は自動的かつ機械的に表示されたものに過ぎないと主張したが、裁判所は検索事業者はデータ保護指令上、一定の義務が課される「データ管理者」に当たり、検索結果に対して管理責任があると認定した。
注目されるのは、裁判所はネット上に情報があることは適法であっても、検索結果の表示にはノーを突きつけたことだ。これは検索事業者が情報の発信元には関係なく、自ら検索結果を削除すべきかどうかの判断を迫られることを意味する。
日本では、盗撮で逮捕された男性がその事実を検索結果から削除するよう求めた訴訟で、京都地裁が2014年8月7日、検索結果は機械的に表示される点を認め、原告の請求を棄却した。控訴審では大阪高裁が2月18日、原告の訴えを退けたが、検索で表示される情報元の抜粋(スニペット)は検索事業者による表示だとして、検索事業者にも一定の責任も認めた。
このほか、東京地裁が2014年10月9日、反社会的団体に所属していた事実を検索結果から削除するよう命じる仮処分を決定、6月25日にはさいたま地裁でも過去の逮捕歴について削除を命じる仮処分を認めるなど、最近の傾向は「検索事業者にも一定の責任があるという流れになってきている」(総務省幹部)状況にある。