「忘れられる権利」に検索サイトの深い悩み 課題は対応コストの負担が大きいこと
ヤフーは3月30日、プライバシーに関する情報を検索結果に表示するか否かについてのガイドラインをまとめ公表した。
非表示の検討に当たっては、個人の属性や記載された情報の性質、情報の社会的意義・関心の程度、情報掲載時からの時の経過などを考慮。性的画像や病歴、犯罪被害やいじめ被害などは「プライバシー保護の要請が高い情報」として、非表示の対象になり得ると判断した。一方、逮捕歴などについては「公益性の高い情報」として、慎重に判断する。
削除判断をめぐっては「プライバシー保護」と、「表現の自由」や「知る権利」とのバランスが重要となるが、リンクがひっそりと消えれば検索結果の中立性に疑念が生じかねない。ヤフーのネットセーフティ企画部マネジャー、吉川徳明氏は「中立であることはサービスの根幹だ。検索サービスが勝手にいじられているとなった瞬間に使わなくなる」と話す。
ポータルサイト「goo」を運営するNTTレゾナントのポータルサービス部門課長、浜屋毅氏は「われわれはネットの中にある情報を探しやすくしてあげるサービスであり、その内容を判断しているわけではない。明らかに問題があるものは検索結果から削除するが、元サイトがなくなることが最も重要だ」と指摘する。
コストは誰が負担するのか
総務省の有識者会合は16日、インターネット上の個人情報の取り扱いについて、削除基準の透明性の向上を求めるとともに、幅広い関係者が情報共有する場を設けることなど提言した報告書案を取りまとめた。
制度面の方策は検討課題としており、当面は民間事業者の自主的な取り組みに委ねた格好だが、削除判断には一定のコストがかかる。ヤフーの吉川氏は「削除すべきか否かについては、社会的には誰かがコストを負って調べて結論を出さなければならず、そのコストを誰が負担するかという問題がある」と指摘する。
いまは裁判を除けば、民間事業者がそのコストを負っている状況にある。情報通信総合研究所研究員の中島美香氏は「小さな事業者は立ち行かなくなるおそれもある。立法で保護すべきなのか、裁判所の事後判断に委ねたままの方がいいのか、あるいは第三者機関のようなものに判断させた方がいいのか、いずれ議論されるときがくるだろう」と指摘する。
(志田義寧 編集:北松克朗)
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