アップルのサポート、評価が「両極端」なワケ 愛好家が高い評点を付けるとは限らない

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その対応でうまくいった場合、機器が新しくなる上に解決までの時間も短いので「絶賛」になるが、少しでも複雑な問題になると適切な対応ができなくなり、逆に顧客満足度を下げているのである。

こうしたやり方を「シンプルすぎる対応」と批判するのは簡単だ。だが、スマートフォンを中心としたIT機器が急速に普及し、トラブルの件数も増える中では、こうした対応にも一理ある、と言わざるを得ない。

トラブルのうちの多くが「シンプルな相談」であり、次に多いのが「機器の故障」である。前者は適切なマニュアルがあれば対応できるし、後者は、原因究明を後回しにして「完動品と交換」という手続きにすればショートカットが可能だ。特に、ハードウエアの製造がシンプル化し、「組み立てるのは容易だが分解するのは面倒」な製品が増えている現状では、修理手続きよりも交換の方が、全体コストは下がる。

「8割の人々の満足とスピード」を重視する

本来ユーザーサポートは、ひとりひとりの問題をきちんと分析し、最適な答えを出すべきものだ。だが、ひとりひとりに対する適切さよりも、大多数を占める「解決方法がシンプルな人」に特化した体制を採る方が、トータルでのサポート時間は短くなり、満足度が上がる。

サポート拠点や人員を拡充する場合でも、担当者に複雑な判断やスキルを求めない分だけ、素早く展開できる。一方で、サポート人員のスキルは上がらないので、複雑なトラブルを抱えた人は「ハズレ」を引く確率が上がり、トラブル解決までの時間は長期化する。

アップルストアのサポート拠点は「ジーニアスバー」と名付けられている。もともとは、マックについて知識豊かな(すなわちジーニアスな)スタッフが常駐し解決を助けて満足度を上げる、という仕組みであったが、アップルのビジネスがiPhone軸に移り、サポートを必要とする人々の数が劇的に増えたあたりから、その性質が変わっていったと認識している。

こうした「シンプル化を軸にしたサポート体制」は、アマゾンなども採用しているものだ。「8割の人々の満足度とスピードを重視する」体制は、現在のトレンドといっていい。

それに対して、日本メーカーで見られる古典的なサポートは、絶賛の声を耳にしづらい一方で、極端な不満の声も少ない。なぜなら「確実な解決を目指す一方で、全員にある程度の負担を強いる仕組み」に近いからだ。

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