「日航機墜落事故」39年後に湧いた真相への疑問 時間の経過により見えてきた真実とは?

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なぜ世界最高の高度な技術を持つボーイング社の修理チームが初歩的な修理ミスを犯したのだろうか。圧力隔壁の修理はしりもち事故で壊れた下半分を新品と交換して既存の上半分に接合するもので、ボーイング社の修理チームにとっては簡単な作業だった。板金加工並みの単純な仕事である。

羽田空港の作業現場でアメリカ連邦航空局(Federal Aviation Administration=FAA)の認定資格を持つ、ボーイング社の技術者(エンジニア)が作業員(メカニック)に出した作業指示・記録書(Field Rework Record=FRR)は間違ってはいなかった。だが、作業員は指示通りに修理をしなかった。なぜ指示通りに作業をしなかったのだろうか。

修理ミスを犯した背景の説明はなし

日本航空はボーイング社を信頼して契約を結んで修理を依頼した。ボーイング社にとって日航は顧客である。日航は大切なお得意さまだ。それにもかかわらず、日航は裏切られた。もちろん日航に安全運航上の義務や責任はあるが、日航・松尾ファイルを読み進むと、ジャンボ機墜落事故の責任は全面的にボーイング社にあることがわかってくる。

日航は本当に加害者なのか。被害者ではないのか。どうして日航はボーイング社に対し、訴訟を起こさなかったのだろうか。

ボーイング社はジャンボ機墜落事故の1カ月後にしりもち事故の修理ミスが事故原因であることを認めた。JA8119号機だけの固有の問題にとどめたかったからだろう。ただし、修理ミスが事故原因だと認めてもボーイング社はその修理ミスがどうして起きたかについて背景を含めこの40年近く、何も明らかにしていない。

日航・松尾ファイル -日本航空はジャンボ機墜落事故の加害者なのか-
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問題の修理ミスは修理作業の過程でどのように起きたのだろうか。後部圧力隔壁の上半分と下半分をつなぎ合わせる際、接合面の一部分が不足して1枚の中継ぎ板を使う指示が出された。だが、作業員はこの中継ぎ板を2つに切り分けて使用した。そのために強度不足が生じた。なぜそんな作業をしたのか。ボーイング社は当然、修理ミスが起きた原因を究明・検証したと思うが、どうしてその内容をつぶさに日本側に伝えなかったのか。

ボーイング社だけではない。アメリカの司法当局も日本の警察や検察の国際捜査共助の求めに応じなかった。元首相の田中角栄を逮捕したロッキード事件のときには、アメリカは日本の求めに応じて嘱託尋問まで行った。それなのになぜ、日航ジャンボ機墜落事故では日本側の捜査共助の要請を断ったのだろうか。政治・外交レベルでの日本とアメリカの関係はどのようなものだったのかも考える必要がある。

ここまでざっと考えただけでも疑問が次々と湧いてくる。

木村 良一 ジャーナリスト、作家

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きむら りょういち / Ryoichi Kimura

1956年10月18日生まれ。慶應義塾大学卒。慶大新聞研究所修了。ジャーナリスト・作家。日本医学ジャーナリスト協会理事。日本記者クラブ会員。日本臓器移植ネットワーク倫理委員会委員。三田文学会会員。元産経新聞論説委員・編集委員。元慶大非常勤講師。2002年7月にファルマシア医学記事賞を、2006年9月にファイザー医学記事賞を受賞している。産経新聞社には1983年に入社。社会部記者として警視庁、運輸省、国税庁、厚生省を担当し、主にリクルート事件、金丸脱税事件、薬害エイズ事件、脳死移植問題、感染症問題を取材した。航空事故の取材は運輸省記者クラブ詰め時代(1989年~1991年)に経験し、日航ジャンボ機墜落事故の刑事処理(不起訴処分)などを取材した。社会部次長(デスク)、編集委員などを経て社説やコラムを書く論説委員を10年間担当し、2018年10月に退社してフリーとなる。

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