AIIB、日米参加への「落としどころ」とは? 中国は「拒否権」を取り下げる可能性

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片や米国はどうか。英国を皮切りに、欧州のG7(先進7カ国首脳会議)参加国が3月に雪崩を打ってAIIB参加を決めたのは、米国にとっても大きな誤算だった。

米ワシントンで戦略国際問題研究所に出向中の鈴木貴元・丸紅経済研究所シニアエコノミストは、「米国は参加すべきだったというのが当地の有識者のコンセンサス」と言う。ただ、議会の共和党が対中脅威論から反対するのは目に見えており、実現の見通しは立たない。

思わぬ副産物は、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉妥結に向けた動きが、米国で加速したこと。中国にアジア太平洋地域のルール形成の主導権を握られないため、米国もTPPに本気を見せた。

日米と中国の落としどころは?

米中は角逐の一方で、協調も探っている。もともと中国がAIIB設立に踏み切った背景には、IMF(国際通貨基金)など、既存の国際金融機関で中国の出資比率を上げられないことへの不満があった。近い将来の増資を予定するADBにも、中国は出資比率引き上げを求めてこよう。

すでに世銀やADBは、AIIBとの協調融資に意欲を示している。既存機関で中国の出資比率を上げ、日米をAIIBに迎え入れて中国は拒否権を取り下げる──。いずれはそんな落としどころが見えてくるのではないか。

「週刊東洋経済」2015年7月18日号<13日発売>「核心リポート04」を転載)

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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