がんの究極薬が開く、新しい治療法の可能性 新薬「オプジーボ」はいかに生まれたのか
――がん免疫薬は、今や欧米のメガファーマ(製薬大手)が参戦し、開発競争が激化しています。
3年ほど前は小野薬品・BMSチームは圧倒的なトップランナーでしたが、今は真後ろや真横に後続組が並んできました。後続組はわれわれの結果を見て、だいたいの予測が付くので、3段階ある臨床試験の2段階をまとめて実施したり、効きやすそうな患者(免疫細胞上にあるPD-1と結合して免疫にブレーキをかける、がん細胞上のタンパク質「PD-L1」が多い患者)に限定したりして、ジャンプができる。そうやってスピードを上げて、どんどん追いついてきています。
「効きやすそうな患者」以外にも効く患者はいる
――競争を勝ち抜くカギは?
後続組はスピードを重視して、効きやすそうな患者に限定した臨床試験で、がん免疫の市場に早く入ろうとしています。しかし、効きやすそうな患者以外にも、効く患者はいます。私たちはがん患者全体にとって何がベストかという観点から、臨床試験を心掛けています。
もう一つはスピード。今小野薬品・BMSは20ほどのがん種で臨床試験を行っていますが、すべてにおいてトップランナーでいることは難しい。そのため、選択と集中を考えています。多くの患者が困っている肺がんや胃がんなどにおいては、リソースを投入してスピードを上げます。膀胱がん、前立腺がんなどでは、ほかのメーカーに先を越されることもあるでしょう。
また、オプジーボは単独でもよく効く薬ですが、ほかのがん免疫薬と併用すると、治療成績が飛躍的に上がります。最善のコンビネーションをいかに早く見つけるか。これが今後勝ち抜くポイントの一つになります。組み合わせ候補を一つ一つ確かめていくのは非常に骨の折れる作業ですが、その中におそらくすごい組み合わせがあります。
――オプジーボの寄与はまだ小さく(2015年3月期25億円)、特許切れ新薬が後発薬に侵食される中で業績は厳しい。
足元の業績は最悪です。2015年3月期は売上高が前期比5%減、営業利益44%減。今期は売上高横ばい、営業利益5%減の計画で、まだ厳しいですが、来年度からしっかりと成長軌道に持っていきたい。
オプジーボの今の適応症は悪性黒色腫だけ。現在申請中の肺がんで今年度内にも効能追加を取得できれば、来年度にはフル寄与し、グンと売り上げの伸びが期待できます。肺がん以降もオプジーボの効能追加がある。多発性骨髄腫治療薬などの有望な製品もあります。
現状の売上高は1400億円ほどで、ほぼがん以外が占めます。ここにがん領域を乗せていく。売り上げを伸ばし、研究開発費を現状の400億円強の規模から、倍くらい使えるようになりたい。
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