ロシアが北朝鮮の「兵器工場化」を急ぐ背景には、戦況の変化がある。2024年6月4日付の「アメリカとウクライナの足並みがそろわない理由」で、筆者は2024年2月以降、北部ハリコフ州や東部ドンバス地方でロシア軍は、いくら攻撃を繰り返しても、大きな占領地拡大に結び付けられないという手詰まり状態になってきたと書いた。
その後、ウクライナ軍はロシア軍から主導権を奪還できる可能性が出てきたと自信を持ち始めている。
このような戦況の中、まさにこの夏にF16の第1陣が欧州から到着する見込みだ。ウクライナ軍は、F16を切り札にした第2次反攻作戦の開始を密かに計画している。ウクライナ軍高官はその時期や規模については固く口を閉ざし、超機密事項となっている。
今回ウクライナ軍は、2023年夏に失敗した前回の反攻作戦とは異なり、ロシア領内への攻撃も想定しているとみられる。この動きを承知しているプーチン氏にとって、ウクライナ軍のロシア領への攻撃を含め、第2次反攻をどう跳ね返すか、という目の前の危機回避が喫緊の優先的課題なのだ。
その中でロシア軍では兵力に加え、砲弾不足も表面化している。エストニアの情報機関の推定では2024年初めの段階でロシアには最大で年間450万個の砲弾生産能力しかなかった。
北朝鮮に砲弾製造技術を提供
1日当たり、使用できる砲弾は1万2000個の計算で、とても足りない。このため、ロシアは北朝鮮に砲弾の提供を要請。平壌は約500万個の砲弾を提供した。
しかしロシア軍のこの北朝鮮製砲弾への評判は極めて悪かった。砲撃に使う前に爆発したり、公表されていた射程通りに飛ばなかったりと、品質に大きな欠陥があった。
このため、ロシアとしては北朝鮮に製造技術を提供、さらに電力や石油も提供することで、兵器生産国として大きな潜在的能力を有する北朝鮮の軍需産業を立て直す構えとみられる。北朝鮮にとっても、兵器産業の近代化は大きな利益をもたらすことになる。
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