「無法地帯の都知事選」"悪用する者"多発の必然 今回の選挙で"制度の穴"が浮き彫りになった

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この時点では、ジャニー喜多川氏の性加害について、BBCがドキュメンタリーを放映し、カウアンオカモト氏が記者会見も行っていたが、テレビ局はほとんど取り上げていなかった。この事件をあえて放送して、世の中の関心を喚起したことは、いまから振り返ると、英断であったと言えるかもしれない。

一方で、政見放送枠が選挙以外の目的に利用されたり、偏向した主張を拡散したりする恐れがあることも明らかになったと言えるだろう。

このような勝手な行いができてしまうのは、日本社会で言論と表現の自由が尊重されているからで、これを制限してしまうと、言論統制、弾圧との批判を受けかねないためだ。

「広告・宣伝の場」として見た選挙の価値は?

都知事選への立候補を「テレビ放送とポスター掲示板が自由に使える広告契約」と見なせば、「超高コスパの契約」と見ることができる。

NHK党によると、今回の都知事選では、一定額を同党に寄付すれば、ポスター掲示板の1カ所で最大24枚のポスターを貼れる権利が寄付者に与えられるという(告示された6月20日以降は、ポスター1枠当たり2万5000円)。

NHK党
「われわれはどうしても大きく報道されない。したがって、こうして奇抜なことをしなければいけないという感じなんですけどね」と語る立花孝志党首(画像:NHK党公式サイトより)

6月21日に行われたNHK党・立花孝志党首の記者会見によると、その時点での寄付金の総額は1000万円に満たず、候補者24人分の供託金7200万円にはまったく届いてはいない。

しかし、もし都内1万4000カ所すべてのポスター枠が“売却”できれば、売上総額は単純計算で3億5000万円となる。それだけで候補者の供託金を賄えてしまうどころか、大幅な黒字になる。

それに加えて、メディアやSNSで取り上げられることも含めた「露出効果」もある。選挙以外のところで同じことやっても「変なことをやっている人がいる」くらいにしか思われなくても、選挙運動として行えば大きな注目を集めることができる。

実際、NHK党の寄付枠を活用して、キックボクサーのぱんちゃん璃奈氏が大規模なポスタージャックをしたほか、出会い系サイトのような広告や風俗店のポスターが掲出された。

ぱんちゃん璃奈
選挙とは関係のない自身のポスターが選挙ポスター掲示板に貼られることを発表したぱんちゃん璃奈氏(画像:YouTube「ぱんチャンネル」より)
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