「無法地帯の都知事選」"悪用する者"多発の必然 今回の選挙で"制度の穴"が浮き彫りになった

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有権者の反発を食らうようなことを候補者が選挙活動で行うという事態が起きているのは非常に逆説的だが、ある意味、「現代」という時代を象徴している出来事とも言える。

“言論の自由”が無法状態を生んだ

投票率が低下する中、泡沫候補が乱立、荒唐無稽な主張やパフォーマンスが目立ち、選挙の本来の意義が見えづらくなってきている。

逆に、選挙を狭義の政治活動の場としてではなく、広義のプロパガンダや広告の場として捉えると、別の世界が見えてくる。

立候補に必要な供託金は都道府県知事で300万円である。選挙運動にかかる費用はさらに膨らむが、立候補をするだけなら、供託金を払うだけでよい。

これを「広告・宣伝費」として捉えるとどうだろうか。

掲示板にポスターを貼れるのみならず、政見放送で1人5分30秒(紹介も含めると6分)の枠が与えられる。しかも、放映回数は2回ある。

テレビ放送やテレビCM、屋外広告には厳しい法規制、自主規制があり、自由な表現を行うことはできない。一方で、選挙ポスターは公職選挙法では内容を直接制限する規定はなく、事前チェックもないという。政見放送についても、無料で、そのまま放送することが義務付けられられている。

言ってみれば、やりたい放題のことができてしまうのが、選挙ポスターであり、政見放送であるということになる。

政見放送に関しては、2023年4月20日の午前6時から約9分間にわたり、「ジャニー喜多川氏の性加害問題」についてNHK総合テレビで放送されるという“事件”が起きた。これは衆議院千葉5区補欠選挙において、政治家女子48党(現NHK党)が政権放送の枠を使って、ニュース番組風の映像を流したものだ。

政治家女子48党
通常は冒頭でされる候補者の紹介もカットされていた政治家女子48党の政見放送(画像:YouTube「みんなの政治 NHKから国民を守る党 NHK党を中心に見る日本の政経チャンネル」より)
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