帝人が虎の子「めちゃコミ」売却に至った切迫事情 「潤沢に資金を使えるわけではない」と社長
風向きが変わったのは2023年9月。帝人が全株売却の方針に転換した。ただ、インフォコムは上場廃止となることを問題視。紆余曲折の末に今回の買収スキームに落ち着き、ブラックストーンの元で再上場を目指す方針を掲げることとなった。
上場廃止から2年間は、電子コミックとITサービスの事業分割を禁止する条件が付けられている。ファンドによる組織の解体を回避する意向が見て取れる。
ブラックストーンへの全株売却の発表と同時に、帝人は2024年度の業績予想修正を行った。営業利益は期初計画の260億円から160億円へ下がる見通しだ。インフォコムの稼ぎ分がなくなる影響はそれだけ大きい。発表翌日、帝人の株価は下落した。
成長したのはいいが手に余る存在に
「将来を考えた場合、帝人グループとして競合が厳しい電子コミックにリソースを使っていいのかを考えた」。同社のIR担当はそう話す。
5月の決算説明会で内川哲茂社長が、「現在の経営状況では潤沢に資金を使えるわけではない。ポートフォリオ変革を検討している」と語っていたように、現在の帝人は事業の取捨選択が必要な局面だ。電子コミック事業が主力事業と肩を並べる規模まで成長したことが、売却を決断するに至ったというのが実情のようだ。
決算と同時に発表された中期経営計画では、「アラミド」「複合成形材料」「ヘルスケア」の3つの問題事業への対応策が中心だった。成長投資の基本戦略では、自動車、インフラ、ヘルスケアを掲げる。
稼ぎ頭である繊維事業は安定しているが、大きな成長は見込みにくい。第2の柱だったITではインフォコムの売却を決めた。今後の成長を目指すには、問題部門にメスを入れながら事業構造を変えるしかない。そのために“虎の子”事業の売却で得る資金1050億円を投じることになる。
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