帝人が虎の子「めちゃコミ」売却に至った切迫事情 「潤沢に資金を使えるわけではない」と社長

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一見すると、帝人とはシナジーの薄い親子関係だが、「ヘルスケア領域で連携することで成長できた」(インフォコム)。

インフォコムのもう1つの事業の柱はITサービスの外販だ。中でも病院向けシステムを手掛けるヘルスケア事業は電子コミックに次ぐ安定した収益で、帝人から役員や社員が送り込まれてきた。

しかし電子コミック分野のシナジーは皆無。帝人グループ2万1000人超の社員がめちゃコミの会員になるわけでもなく、社員割引が適用されるわけでもない。インフォコムの電子コミック事業が成長するほど、帝人との距離は開くばかりだった。

一方の帝人は、業績悪化にあえぐ。2023年度は約1兆円の売上高に対し、本業の稼ぎである営業利益は135億円だった。インフォコムの営業利益97億円を差し引くと、帝人の稼ぎはわずか38億円となる。

自動車関連や医薬で起きた誤算

ここまで収益が低下した要因は主に2つある。1つ目はマテリアル事業の赤字転落だ。

タイヤの補強材などに使われるアラミド繊維や、EV(電気自動車)市場での成長を狙った自動車向けの複合成形材料が低迷。2017年にアメリカの複合成形材料メーカーを約840億円で買収して自動車向けに力を入れてきたが、事業売却の可能性も含めて検討を進めている最中だ。

2つ目は、ヘルスケア事業の収益悪化。痛風治療薬「フェブリク」が2022年度に特許切れとなりシェアが急降下。2021年に武田薬品工業から糖尿病薬を買収したが、補完するには至らなかった。2021年度に432億円だったヘルスケアの営業利益は、2023年度に73億円まで落ち込んでいる。

実は帝人は2022年7月に、インフォコムに株売却を持ち掛けている。持ち株比率約34%を維持しつつ、残りを売却する方針だった。同年10月に帝人の業績悪化を理由に見送ったが、インフォコム株を継続保有する方針は不変だった。

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