フィンランド「学習困難への介入」最新研究の中身

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デジタル先進国と言われるフィンランドでは、教育現場においても1990年代からICTの環境整備が推進され、インクルーシブ教育に関する研究でもICTが活用されてきた。そして今、同国の2つの国立大学において、ICT活用も含む「学習困難児への介入」の研究が新たに進められているという。その研究に関わっている公認心理師の矢田明恵氏が、詳細をリポートする。

同じ介入でも「子どもによって効果が違う」という事実

私は現在、ユヴァスキュラ大学とトゥルク大学(共にフィンランド国立大学)が、共同で学習困難についての研究を行う中核的研究拠点(Centre of Excellence for Learning Dynamics and Intervention Research、InterLearn;以下、InterLearn)にて、ポスドク研究員として働いています。

矢田明恵(やだ・あきえ)
公認心理師、臨床心理士
青山学院大学博士前期課程修了。フィンランド・ユヴァスキュラ大学博士課程修了、Ph.D. (Education)。日本で臨床心理士として療育センター、小児精神科クリニック、小学校等にて6年間勤務。主に特別な支援を要する子どもとその保護者および先生のカウンセリングやコンサルテーションに従事。夫と2013年にフィンランドに渡航。現在、ユヴァスキュラ大学およびトゥルク大学Centre of Excellence for Learning Dynamics and Intervention Research (InterLearn) ポスドク研究員、東洋大学国際共生社会研究センター客員研究員。インクルーシブ教育のほか、フィンランドでの出産・育児経験から、フィンランドのネウボラや幼児教育、社会福祉制度など幅広く研究
(写真:矢田氏提供)

InterLearnは、Research Council of Finland(※)の助成を受け、2022年に発足、2029年まで継続予定の研究拠点です。その大きな目的は、学習困難についての縦断研究や介入研究を含む幅広い研究を行い、その成果を社会に還元することにあります。

※日本でいう学術振興会のような、さまざまな研究プロジェクトに資金を提供する機関

ここで、医学的診断に用いられる「学習障害(Learning disabilities)」ではなく、「学習困難(Learning difficulties)」という用語を用いているのは、フィンランドのインクルーシブ教育が「社会モデル」に基づいており(関連記事参照)、学習障害だけでなく、「広く学習に難しさを抱える子どもについて研究する」という考えが背景にあります。

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