教育先進国フィンランド、ゲームも活用「学習困難児への介入」研究最前線 子どもによって異なる効果、違いの要因に迫る

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研修後、先生たちには13週間にわたり、このプログラムを使って対象となる子どもへの介入を行ってもらいます。この間にも、追加の研修が1回、必要に応じて先生へのガイダンス、そして子どもへの3回にわたる簡易な測定が行われます。13週間の介入を終えた後、最後に介入後の測定を行い、終了となります。

タブレット端末を用いた「ゲーム課題」を活用

では、いったいどのような介入を行っているのでしょうか。今回用いている介入プログラムには、週に1回、対象となる子どもたちが対面で集まり、グループごとにさまざまな読み課題を行う取り組みが含まれています。

読み課題はいくつかあるのですが、例えば、「1分読解課題」があります。子どもたちはそれぞれ自分で、あるいは先生と一緒に選んだテキストを、時間を測りながら1分間声に出して読み、どれくらい正確に読めたか、どれくらいの時間で読めたかを読解チャートに記録していきます。同じテキストを数回繰り返して読むので、子どもたちはチャートを見ることで自分のスキルの向上を確認することができます。

そのほか、学校での自主学習や家庭学習における介入も実施しています。例えば、自主学習としては、ICTツールを用いたゲーム課題に取り組みます。「Lukukupla」と呼ばれるユヴァスキュラ大学のUlla Richardson教授が率いる研究チームが開発した、オンラインの読み課題を行うゲームです。

オンラインの読み課題を行うゲーム「Lukukupla」
(写真:Ulla Richardson氏提供)

子どもたちはまず、学校のタブレット端末にそのゲームのアプリをあらかじめ先生にダウンロードしてもらい、自分のキャラクターを選んで課題を始めます。ゲームは、ある教授の研究室に訪れて課題を解決するところから始まり、読解課題をクリアする度にシャボン玉の中の星を集めることができるという設定。

最初にキャラクターを設定(左)。読み課題をクリアすると星を獲得できる(右)
(写真:Ulla Richardson氏提供)

初めの3つの課題でその子の読み能力をアセスメントし、能力に合わせた課題へと移行して習熟度に合わせて進んでいく流れになっています。私たちの介入研究では、子どもたちはこのゲーム課題を週に3回(1回15分)、クラス担任と決めた時間に行ってもらっています。

ICTツールは長所と短所を理解して活用を模索

ICTツールを用いた学習にはさまざまな声があることも事実です。ICT先進国である隣国のスウェーデンは最近、これまでの積極的にICTを教育に用いていく方針から、古典的な紙の本を導入するための資金を投入して、ややアナログな方法に戻ることを発表しました。フィンランドでも、ICTツールを用いた学習がコロナ禍以前から行われてきましたが、これらの過度な使用が子どもの集中力ひいては学習力の低下につながっていると警鐘を鳴らす現場の先生もいます。

私たちのプロジェクトも、ICTツールを全面的に用いて介入を行うことは考えていません。先行研究の中には、ICTツールを子どもが一人で行っても効果は上がらず、先生などの大人と一緒に行った場合にのみ読み能力に効果があったことを示すものもあります。

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