日本の常識が通じない小池都知事「学歴詐称疑惑」 黒木亮氏「書類に頼りすぎ。エジプトは違う」

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――卒業したことにできるような事情は何か小池氏にあったのですか。

小池氏は父親などを通じてエジプト副首相だったアブデル・カーデル・ハーテム氏とのコネがありました。父親は中曽根康弘氏や中谷武世氏(元衆議院議員、日本アラブ協会会長)など、日本の有力政治家と付き合いがあったので、日本に食い込もうとしていたハーテム氏が、彼らの頼み事を聞いたのかもしれません。

一度記録が書き換えられてしまえば、その後カイロ大学で対応する人たちは記録に従って回答したり、書類を作成したりしているだけなのでしょう。小池氏の場合は、エジプトの国益がらみなので、躊躇はまったくないのだと思います。

サダト、ムバラクと軍事政権だったエジプトは2011年に「アラブの春」で民主化しましたが、クーデターが起きて軍事政権に戻っています。実質財政破綻状態で、エジプトとカイロ大学にしてみれば、日本から巨額のODA(政府開発援助)を獲得するために小池氏を利用できます。

「カイロ大声明文」で日本のメディアは沈黙

――前回の都知事選の告示直前の2020年6月、在日エジプト大使館のFacebookに「小池氏の卒業証書は正式に発行された」とのカイロ大学の声明文が掲載されました。掲載されたのは、現地取材をもとに記事を執筆していた黒木さんが、郷原信郎弁護士と一緒に日本外国特派員協会での記者会見に臨む2時間前のことでした。

当時、都議会では、自民党が小池知事の学歴詐称問題を熱心に追及しており、卒業証明書類を提出するよう求める決議案を提出するところまで行きました。しかし、カイロ大学から声明が出たことで、小池氏の庇護者だった二階俊博自民党幹事長(当時)から「エジプト政府とことを構えることになるからやめろ」と圧力をかけられ、都議会自民党は決議案の提案者から降りたと関係者から聞いています。

日本のメディアはそれまでも、カイロ大学に聞くと「卒業した」と答えるので及び腰でしたが、声明によってこの問題を追及しない姿勢が決定的になりました。声明文は、日本のジャーナリストを威嚇する文言も含まれており、メディアを黙らせる効果は大いにありました。

――今年4月、カイロ大学の声明文について、当時小池氏の側近だった小島敏郎弁護士が、小池氏の依頼で原案作成に携わったことを『月刊文藝春秋』5月号で告発しました。

日本外国特派員協会で記者会見した小島敏郎氏(2024年4月17日、記者撮影)

2020年当時、郷原弁護士と僕の記者会見に来ていたシリア人記者が、直前に掲載された声明文を持っているので何か変だなとは思いましたが、まさか小池氏らが自ら文面を作っていたとは思いませんでした。

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