JR東海「リニア」、静岡県知事交代でも残る難題3つ プロジェクトを左右する「工期・資金・人材」

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静岡工区は着工どころか、「トンネルの掘削に伴う事前のボーリング調査も、ほとんど何もできていない」(JR東海関係者)。

静岡県は環境問題などから、ボーリング調査を県境300メートルで止めるように要請。これにより調査は県境の約500メートルの地点まで進んだ状況で、昨年10月からストップしていた(5月16日時点)。

静岡県の北部にある南アルプスと大井川上流部の地下にトンネルを通す静岡工区は屈指の難工事と言われる。標高3000メートル級の南アルプスを貫き、地表からトンネルまでの深さ(土かぶり)が最大1400メートルに達する。「あの南アルプスのトンネルは、どのようなリスクが待ち受けているのかわからない」と、鉄道の事情に詳しいアナリストは話す。

静岡駅
静岡駅の新幹線改札前には、「リニア中央新幹線の開業に向けて」と題されたプロジェクトの解説が掲示されている(記者撮影)

ボーリング調査を終えても、その後の先進坑(地質調査や作業員の移動などに用いられる)や本坑を掘る際も、難航することが想定される。

『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太「命の水」の嘘』などの著書がある小林一哉氏は、赤石断層(赤石山脈の西側を走る断層)の存在を「やっかい」と指摘する。「いくつか破砕帯(砕かれた岩が一定の幅を持って帯状に連なっているもの)があるため、先進抗などを掘る際に大量の水が出る可能性はある」と話す。

「7兆円で足りるのか」と現場でざわつく

難題の2つ目は資金の問題だ。「お金は大丈夫か。7兆円で足りるのか」。JR東海の現場では目下、このような懸念の声でざわついているという。

JR東海は工事費の見通しを7.04兆円としているが、これは2021年4月の公表時点までの物価を基に算出している。公表後の3年間でコンクリートや鉄筋などの資材、そして作業員の労務費が一段と高騰している。

JR東海は「あらゆる観点からコストダウンの可能性を探る。技術のブラッシュアップや営業線の運営・保守のさらなるコストダウンにも取り組む」としている。しかし、超大手ゼネコンが頭を抱える資材高などの影響をどこまでカバーできるかは不透明だ。

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