財界総理輩出の名門・住友化学が陥った"2重苦" 医薬品と石油化学の苦境で過去最悪の赤字転落

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従来、住友ファーマは上場子会社として独立経営を尊重してきたが、「住友化学が中に入って取り組んでいく」(岩田社長)。住化は債務保証による金融支援を実施するほか、企業再生の外部専門家を活用した合理化支援や複数の経営人材派遣なども行う。

ただ、人員や研究開発費の削減は急務だが、今後の成長シナリオは描きにくくなる。そもそも有望な新薬を創り出すのにすべての医薬品メーカーが難渋している中、国内中堅にすぎない住友ファーマの立ち位置を見いだせないという根本原因がある。

岩田社長は「あらゆる選択肢を検討していく」と、持ち株売却の可能性を示唆。すでにM&Aかいわいでは住化による売却を念頭に置いた動きが始まっている。

悩みの種はラービグ

石化事業も頭が痛い。中国の経済減速を受けて、汎用的な石化製品の市況が低迷している。業界の中でもとくに住化の業績悪化が深刻なのは、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコとの合弁会社ペトロ・ラービグを持ち分法適用会社として抱えているからだ。

産油地に立地し、原油よりも安価なエタンガスを主原料とするラービグは、「極めて競争力のあるプロジェクトのはずだった」(岩田社長)。そのコスト競争力への自信もあってか汎用品が主力。しかし、前述のとおり、汎用品市況の悪化で利益が出ない。

加えて、ラービグは石化の前工程である石油精製も行う一貫プロジェクトで、精製プラントの競争力にも難がある。低付加価値の重油を多く産出し、ガソリンやジェット燃料など高付加価値品の割合が低いのだ。

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