EV移行で先行、中国に広がる「過剰生産」の大問題 余るガソリン車工場、供給過剰で値下げの嵐

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中国メーカーの多くは、市政府によって部分的、もしくは完全に保有されており、減産や人員削減をしぶっている。国有自動車メーカーの長安汽車は、ヒョンデの元工場から徒歩でわずか20分の場所に工場を持っている。この工場の広大な駐車場は、売れ残りの自動車で埋め尽くされていた。

ガソリン車の生産に依存している重慶のような都市は、雇用維持のジレンマに陥っている。EVの部品点数ははるかに少ないため、組立に必要な人員はガソリン車に比べかなり少なくなる。

とくにロボティクス分野など技術面で優れた経歴を持つ労働者であれば、解雇されても簡単かつすぐに新たな仕事が見つかるはずだ、と重慶で取材した複数の自動車工場作業員は話した。

職を得る難易度は上がってきている

ただ、半熟練の労働者(年齢が比較的高く、能力を磨くための訓練コースを受けてこなかった人たちを含む)にとっては、職を得る難易度は上がってきているという。

冒頭のジョウは、長安汽車で現在の職に応募したときの「競争は激しかった」と語る。それでも、元ヒョンデの工場作業員で今も失業中という人を重慶で見つけるのは極めて難しい。

中国の工場作業員の大部分は農村部で育った出稼ぎ労働者で、ガソリン車が生産されている地域社会との結びつきは少ない。そのため、職がなくなれば、簡単にほかの都市や産業に移ることができる。

とはいえ、重慶の自動車産業にはかすかな暗雲が垂れ込めている。需要が減り、非熟練労働者が残業代を得られるチャンスがなくなってきたからだ。ヒョンデの元工場では、今でも多くの場所にヒョンデの看板がかかっているのが見える。

だが、「新しい考えで、新しい可能性を」という明るいスローガンがかつて掲げられていた工場正門には、大きな影ができていた。

(執筆:Keith Bradsher記者)

(C)2024 The New York Times 

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