EV移行で先行、中国に広がる「過剰生産」の大問題 余るガソリン車工場、供給過剰で値下げの嵐
中国の沿海部に工場を持つ自動車メーカーがガソリン車を輸出する一方で、重慶のような内陸部では工場の多くが危機に瀕している。沿岸までの輸送費がかさむため、輸出したのではコスト的に見合わなくなるからだ。
中国では、EVのほぼすべてが新しい工場で組み立てられている。新工場は地方政府や国が統制する銀行からの補助金の対象となるので、自動車メーカーにとっては既存の工場を転換するより新しく工場を建てた方が安上がりなのだ。その結果として、とてつもない設備過剰が生じている。
ガソリン車販売減は「欧州市場消滅」に匹敵
「中国の自動車産業は革命を迎えている」。グローバルデータ・オートモーティブのアジア予測ディレクター、ジョン・ゾンは、「時代遅れとなったエンジン車の製造能力は死につつある」と言う。
ガソリン車の販売台数は、ヒョンデが重慶の工場を開設した2017年の2830万台から昨年には1770万台へと激減。減少幅は、昨年のヨーロッパ連合(EU)全体の自動車市場、あるいはアメリカにおける乗用車・ライトトラックの年間生産台数に匹敵する。
ヒョンデの中国販売は2017年以来、69%も減少した。同社は昨年夏、重慶の工場を売りに出したが、それを欲しがる自動車メーカーはなかった。ヒョンデは結局、工場の土地、建物、大部分の設備を地方政府の開発会社にわずか2億2400万ドル、つまり取得価格1ドルに対し20セントで売り戻すことになった。
地方政府の開発会社は今年、土地に対する保険を探しているところで、新しいテナントは現れていないと発表している。