【産業天気図・通信業】ソフトバンクのボーダフォン買収で通信業界に旋風か

2005年はソフトバンク<9984.東証>やKDDI<9433.東証>が始めた格安固定電話の影響でNTT<9432.東証>の収益が低下すると見られたが、両社のサービスは伸び悩み、NTTはむしろ業績予想を上方修正するほど。06年は、その格安固定電話の影響も薄れ、NTTが固定電話事業で大幅な減収減益に見舞われる懸念はなさそうだ。固定系でのポイントは、NTT東西が拡大を急ピッチで推し進める光接続サービス「Bフレッツ」の進捗度。ADSLでトップの座にあるソフトバンクの契約者数は伸びが鈍化しており、NTTグループが巻き返しに出ると見られる。
 その固定市場とは段違いの動きを見せているのが携帯電話マーケットだ。ソフトバンクは新規参入組として07年から携帯電話サービスを開始する予定だったが、「よく考えてみると、いっそ買ったほうが早いかな」(孫正義社長)ということで、ボーダフォン<非上場>を1兆7500億円で買収するという日本最大の買収に打って出た。
 ボーダフォンは国内携帯電話市場で第3位。6割近くのシェアを持つNTTドコモ<9437.東証>と2割強のauに比べ、20%を切るボーダフォンは新規契約の伸びが鈍く、苦戦ぎみ。契約者約1500万件を手に入れた効果は大きいが、買収に約1兆円の借入を行うため財務制限条項がつき、激安戦略など破天荒な価格戦略は採りにくいと見られる(詳細は『週刊東洋経済』4月1日特大号「時間買うソフトバンクの関門」)。
 携帯電話業界で今年最大のイベントは、11月から導入される番号ポータビリティ制度(携帯会社を替えても電話番号をそのまま持ち運ぶことができる)をめぐる戦い。制度導入を前に上半期から顧客争奪戦が過熱すると目され、auを擁するKDDIは利益を減らしてでもシェア拡大に出る構えだ。また下期にはボーダフォンブランドからソフトバンクブランド(新ブランド名は未定)の携帯電話がお目見えする。豊富なコンテンツと固定系ブロードバンドでは断トツトップの地位を誇るヤフーブランドを組み合わせ、携帯電話市場で旋風を巻き起こすことができるか。
 かつて固定系ブロードバンド「ヤフーBB」では常時高速接続・低価格のセットで業界に衝撃を与えた。当時と比べて大きな衝撃を与えるのは難しいと見られるが、ソフトバンクの“暴れ方”次第では、06年下期は上期以上に携帯電話市場が大揺れするだろう。
【井下健悟記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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