「ブラザー工業のTOB案」にローランドDGが大反論 DG常務「傘下に入ると営業利益が50億円下押し」

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――利益の8割をA社との関係に依存するとなると、そもそもの事業構造にリスクがあるとはいえませんか。

リスクがあるのは事実。品質やサポートなど総合的にヘッドの評価をした結果として、全体の8割をA社が占める状態になった。しかし、いい製品を選んで使うこと自体は間違っていないと思っている。また、A社との関係が緊密でないと8割まで増やさない。

――ローランドDGの主張にブラザーはどう反応しているのでしょうか。

ブラザーから最初にTOB提案を受け取った2023年9月以降、ディスシナジーに関する指摘をしているが、「ディスシナジーの発生はない」としか言ってこない。「起きない」というのであれば明確に示してくださいと、ブラザーには伝えている。

もちろん、トータルでみてディスシナジーを上回るだけのメリットがあればいい。ブラザーからはシナジーについて、自社の潤沢な開発人員の一部を当社に回す、開発費用を増やすなどの提案を受けている。しかし、具体的な施策にまでは落とし込めていない。ディスシナジーを打ち消すような施策の提案をいただいていないと私は認識している。

ブラザーのTOB価格の妥当性に疑問

ディスシナジーを打ち消すほどのシナジーを生み出すことは難しいとも考えている。当社の営業利益率の実績値を基に考えると、営業利益50億円のマイナス効果を打ち消すには、500億円の売り上げが必要となる。これは当社の今の売上高とほぼ同じ額だ。

A社の回答を踏まえると、程度の差はあれディスシナジーが発生すると考えるのが普通。ディスシナジーが起きない前提でブラザーがTOB価格を5200円としたのであれば、その妥当性については疑問だ。今後価格を見直すにしても、マイナス部分をしっかり評価して、株主に提示すべきではないか。

ローランドDGの公表資料
4月26日に公表した資料では「A社」からの回答を引用してディスシナジーの影響を訴えた(編集部撮影)

――ローランドDGの株主には、ブラザーに買収された後でのディスシナジー発生は関係のないことのように受け止められませんか。

アメリカでは高いTOB価格を提示したほうが勝つのが一般的。しかし、日本では少し状況が違うのではないか。経済産業省が昨年8月に公開した「企業買収における行動指針」では、買い付け価格だけでなく企業価値を評価することも求められている。

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