「仕方のない赤字」があるという、大いなる勘違い 日立もかつては黒字に頓着しない体質だった

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こんな例がありました。旧社内カンパニーの電力システム社は、電力のニュービジネスとして「売電ビジネス」に取り組んでいました。先に触れた電力事業の自由化を受け、日立も新規参入したのです。

日立にはタービンやボイラーなどの発電設備の設計・製造技術がありますし、メンテナンスのノウハウと経験も豊富ですから、自由化をチャンスととらえ、売電ビジネスに参入したのだと思います。火力発電所も新たに建設しました。

しかし、電力システム社は利益率が低いままでした。BU制を導入してサイロを壊し、実態を見てみると、その売電ビジネス事業が赤字を垂れ流していたことがわかったのです。

売電ビジネスで競争力を得るには、コストを一定以下に保つため、安価な燃料を長期的・安定的に調達することやリスク管理が必須ですが、日立にはそのノウハウがありませんでした。

売電先との契約も、調べてみると首をかしげざるをえない内容でした。電力価格がほぼ一定となっているのです。燃料費など材料費が変動した場合には、そのぶんすべてを電力価格に反映させるという仕組みが不十分だったのです。

案の定というか、その後燃料費が上がり始めるとたちまち赤字を垂れ流す状況に陥ってしまいました。利益を上げるどころか、発電施設の建設への投資を回収することすらできなかったのです。

土木工事「禁止」

私は新たな組織である電力BUのCEOと議論し、すぐに撤退を決めました。もちろん、契約がありますから、撤退を決めたからといってすぐに事業を終結させられるわけではありません。その代わりに、個別のプロジェクトごとに、ビジネス環境の変化を先方に説明し、契約内容を変更していただく交渉を進めました。こういうとき大事なのは、だめなら「はいそうですか」ではなく、少しでもロスコストが削減できないか、泥臭く模索することです。

売電ビジネスからの撤退と併せて、土木工事付きのプロジェクトの一括受注も禁止しました。各BUが受注している土木工事付きのプロジェクトの実態を精査したところ、どれもこれもことごとく赤字であることが判明したからです。これも即決です。

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