南海電鉄30000系、登山する特急「こうや」の本領 平坦・山岳両方の区間を行き来する高野線の顔

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30000系の先頭車は非貫通型。先頭部の窓は中央に大型の曲面ガラス、両サイドには側面に回り込むガラスを配した構成で、乗務員室後ろの席からは前面の「展望」を楽しむことができる。4両編成の極楽橋方が1号車、難波方が4号車で、短い編成ながらパンタグラフは全部で4基搭載。一方、乗降口は各車両前後どちらかだけにある。

車内は2+2列のリクライニングシートが並ぶ。側面の窓もシート2列に対して1枚と大型で眺望がいい。2号車に飲料自動販売機、3号車にトイレや洗面所がある。かつては2号車にサービスコーナーがあったが、1999年の改造時に撤去された。3号車に設置されていたカード式公衆電話も現在はなくなっている。

南海 30000系 車内
2+2列のリクライニングシートが並ぶ30000系の車内(記者撮影)
南海 30000系 運転台 大型ガラス
30000系の運転台。客室からは大型曲面ガラス越しの前面展望も(記者撮影)

「高野線に新たな観光特急」

高野線の三日市町までを平坦区間、三日市町―橋本間は准山岳区間と呼ぶ。橋本―極楽橋間が山岳区間で、とくに高野下―極楽橋間は最高50‰・半径100mの急勾配・急曲線が続く。

堺東 30000系 こうや 
堺東駅付近を走る30000系の特急「こうや」難波行き(記者撮影)

そのため、30000系は1両の車長17m、抑速ブレーキ、すべての車両にモーターが付いた全電動車、といった山岳区間対応の特徴がある。ただ、モーター自体は南海本線の特急サザンの指定席車両10000系と同じタイプだという。

先頭から2両目(2号車)の極楽橋寄りの台車にはレールとの間にアルミナ粒子を噴射する装置がある。運転台中央にスイッチがあり、運転士が手動で操作をして、勾配を上る際に車輪の空転を防止する。

同社運輸車両部の課長補佐、泰中直樹さんは「平坦区間では最高速度の時速100kmで走行し、山岳区間ではちゃんと登坂できるというのが30000系の大きな特徴」と話す。「そもそも車長が17mと短いうえに、トイレなどの設備も設置しているので床下にはさまざまな機器を詰め込むように配置してある」と説明する。

南海電鉄は「世界遺産高野山への更なる誘客強化策として顧客体験を向上させるコンテンツを充実させることを目的とし、2025年度を目標に高野線に新たな観光特急車両を導入する計画」と公表している。高野線に「新たな顔」が加わることで30000系にも改めて注目が集まることになりそうだ。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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