「著名人の詐欺広告」で問われる"無料ネット社会" 生成AIが生み出すコンテンツは著作権違反か

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ネットにも規制が必要との声が出てきている。実際欧米では規制する法律も出てきた。だがそれらは詐欺のような犯罪や、個人情報の取得を制限することはできても、MFAは規制できないだろう。メディアのふりをしている、と書くと犯罪者のようだが、メディア企業じゃなくてもメディアとして振る舞うこと自体には何の文句も言えない。私だってMediaBorderという個人メディアを運営している。MFAを規制されたら私もとやかく言われかねない。法的には「悪」とは言えないのだ。

また、スポーツ紙や芸能誌のデジタル版がさかんに送り出すコタツ記事。あれはMFAとどこに違いがあるだろう。コンテンツを人間が書いているか、AIが生み出したかの違いがあるだけで、広告収入を得るために記事を載せるのだから変わらないと言っていい。そのうち、テレビの前に置いたスマホで番組を録音し、あとは自動的に炎上しそうなコメント部分を抜き出して適当な写真を添えて自動的に記事を公開する仕組みでコタツ記事の量産を始めるスポーツ紙も出てくるかもしれない。理論上は十分可能だ。

MFAは無料広告モデルの行き着くところをあらわに示してしまったのかもしれない。コンテンツなんて人間が作らなくてもメディアは成り立つと。生成AIの登場がその流れを決定づけた。オッペンハイマーが原子爆弾を開発したら世界のありようがすっかり変わったように、生成AIがネットの様相を変えようとしているのだ。

無料世界と有料世界の境界

くしくも無料サービスで成長した2大巨頭SNSが有料に足を踏み入れているように、これから先のネット世界は有料か無料かで2つに分かれると私は予想する。

一方は無料の世界。その代わり、AIが作成したのか人間によるものかわからないコンテンツがメディア上に無秩序に出没し、周りを広告が埋め尽くしている。ユーザーは正しい情報を得る意欲もなく、ただ暇つぶしになるとそうした怪しいコンテンツを消費する。実態があるのかないのかはっきりしない広告主が勝手に著名人の写真を使った広告で人々を誘う。中には出し先を吟味せず広告出稿したまっとうな企業の広告も表示されるが、広告主として確認もしていない。

次ページユーザーは2つを使い分ける
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事