小泉今日子×福岡伸一「"アイドル"と動的平衡」 どんどん壊して、新しくつくり変えていく
小泉 考えることは子どものころから好きで、例えば、アイドルという仕事についても……。
福岡 15歳からアイドルになったわけですよね。
小泉 はい。でも、アイドルになって少ししたら、「みんな、アイドル、アイドルっていってるけど、ちょっと待って。アイドルってどういう意味よ?」って考えるわけです。
それで、辞書を引くとアイドルの項目には「偶像」って書いてある。今度は「偶像ってどういうこと」みたいな感じで……。
福岡 偶像を破壊すべきだっていうことになったわけだ。
小泉 そうです。アイドルが偶像という意味ならば、アイドルは別に厳密なジャンルではないんだなと。
「アイドルって、かわいいお洋服を着て、こんな感じのポップスを歌って、こんな感じ」みたいなイメージにみんなとらわれすぎてないかと思って。
そういうところから自由になったら、もうこっちのもんじゃないかという感じで(笑)。さまざまなジャンルの音楽をやってみるとか、いろんなタイプのお洋服を着るとか、そんな発想にどんどんつながるんです。
だから、一度捉えた言葉に対して、自分が自分のルールを決めていくみたいなことがすごく好きで……、ずっと好きなのかもしれません。
福岡 イメージを壊してから、新しいものを創造していますよね。まさに「動的平衡」ですね。
動的平衡に気づいたきっかけ
福岡 福岡ハカセが最初に「動的平衡」に気がついたのは、少年時代にさかのぼるんです。そのときはまだ「動的平衡」という言葉は考えていなかったんですけどね。
そのころ、どちらかというと私は内向的な少年で、人間の友だちがいなくて、虫が友だちでした。夏休みの自由研究は、チョウを見つけてきて、それを育てることをやっていました。
チョウって、小さな卵をミカンとかサンショウみたいな柑橘系などの葉っぱに産みつけるわけです。卵からかえった幼虫はそれを黙々と食べて育っていく。